ホワイトな保育園が出来るまで

ブラックだ、過酷だと言われる保育業界。ホワイトな保育園は実現不可能なのか?会計や労務を踏まえ、現場の裏話も交えつつ記載していきます。

保育士の正社員を完全週休3日制にする6つの理由

さて、これまでは保育園のお金の仕組みについて簡単に述べてきた。

その上で当園では、収入ありきで物事を決めるのではなく、【目指す保育を実現し続けながら、従業員に最低限の労働環境の保障を実現するために、本当に必要な予算】を把握していく方針をとっている。

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そして、【従業員に最低限の労働環境の保障】について、当園では以下のように定めている。

 

1.保育士の賃金は月給20万円~(時短や時給の場合も、月給の時間比例で算出)

2.正社員は完全週休3日制

3.残業や持ち帰り仕事は無し

4.園児が降園次第、早帰りあり(当然に賃金カットはしない)

5.タイムレコーダーで勤怠を管理し、1分単位の賃金支給、休憩時間の法定遵守

6.別棟にスタッフルームを完備し、休憩は現場から離れることの徹底

7.有給休暇を消滅せずに使い切ること

8.その他、法定の遵守

 

1は地域の最低賃金や周辺園の相場よりは高いので、【最低限よりも高い】という見方も出来るが、求める保育の質や負担感を考えれば、これより安いのは少し厳しいのではないかと感じている。また、通勤圏内の地域には、大きな都市も多く、競合先との比較という観点などではこの額を最低ラインとしている。

2~4は自主的に定めている条件で、5~8は労基法を中心に、法の定めの最低ラインとなっている。

 

今回は、このうち

2.正社員は完全週休3日制

としている理由を記載していく。

 

1.制度の定めによる条件

まず、企業主導型の規定で、保育園の1日の開所時間は11時間または13時間という条件がある。多くの認可園なども同程度の水準となっているはずだ。

保護者の労働時間8時間+通勤時間を基準にし、ある程度の業態の就労時間にマッチするには、最低でも11時間開所の必要がある。

 

次に、保育士の配置基準については、子どもが1人でもいる場合に、保育士は2名必要と定められている。厳密には保育従事者(保育士資格が無くても要件を満たす人)で良いが、半数は保育士の必要があるなど各種規定もあり、ひとまずここでは保育士を2名配置する、としておく。

 

当園は11時間開所で、開所中常時2名の保育士がいる状況を作る、という場合の最もシンプルな方法は【1日10時間勤務+休憩1時間というスタイルで、正社員の保育士が2名園に居続けること】である。(休憩時間中は時短やパートの保育士が居ることで、現場配置を満たす)

そしてこれは単にシンプル(シフト管理などが楽)だというだけでなく、以下のような点からも非常にメリットが大きい選択だと考えている。

 

2.子どもの安定

子どもが精神的に安定して園で過ごせることは最も大切なことであり、その際に先生との愛着関係は欠かせない。

特に、入園して間もない時期や0,1,2歳のうちは、環境変化は子どもの気持ちに不安を生みやすく、「おなじみ」の状態というのはとても大切である。

そのため、1日の中で様々に先生が入れ替わるよりも、1日を通して同じ先生がいる、という環境は子どもの安心につながると言える。

 

3.ミス(事故)防止

保育士が把握しなくてはいけない子どもの情報は、毎日様々に発生する。園児の健康状態から機嫌、家庭の様子や保護者に関すること、活動中の様子、配慮事項、気がかり、など日々生じることは山積みである。アレルギーや病気などの、伝達ミスが重大事故を引き起こしかねない情報もある。

そして情報の伝達(共有)はその回数が増えれば増えるほど、誤って伝わったり、漏れが生じたりしやすい。(伝言ゲームと同じ)

子供達を保育する傍らで漏れなく正確に引継ぎをするというのは、どれだけルール化や仕組み化をしても、実態として非常に難しい。(確実に行うには、引継ぎをする側、される側の両名が保育現場から離脱した状態で行う必要があり、これは配置や現場状況からも非現実的だ。)

早番から中番に引継ぎ、中番から遅番に引継ぎ、と引継ぎが発生するするよりも、1日中常駐する保育士がいる方が、引継ぎは発生しづらいと言える。

 

4.プライベートの充実

一般に、仕事のある日は仕事の前後に予定を入れづらい傾向にあると考えている。

仕事の前に予定を入れる場合、何かあっても仕事に遅れないように余裕を持たせたり、あまり遠方に行かれなかったりするだろう。

仕事の後に予定を入れる場合、残業になってしまう可能性を考えたり、仕事の疲れを考えると、これまた遠方や遅い時間までの予定も入れづらい。

 

また、休みの日にしても、仕事の疲れから寝坊をしようとゆっくり起き、溜まった家事などに追われ、ちょっとお出かけをしても、翌日からの仕事に備えて早めに寝ておこうか・・・などと過ごすと、殆ど何もできずに1日が終わってしまうということはないだろうか。そうなると、週の休みの日数は多いに越したことはない。

連休を取得したいという場合も、週休2日の場合には有給休暇をくっつけて取得することが多いが、週休3日制だとシフトによっては有給休暇を使わずとも3連休や4連休を取ることも可能だ。

 

以上のようなことから、週の労働時間が同一の場合において、週休2日と3日とでは、週休3日の方がプライベートの時間の自由度が増える(やれることの選択肢が増える)のではないか、と考えている。

 

5.急な欠勤、代勤手配に困りづらい

労働者自身やその家族の病気などやむを得ない事情で急な欠勤が生じることがある。感染症のように、一定期間の欠勤となってしまうケースもあるだろう。

その際も、元々の週の休みが多いと、欠勤になる日数も少なくて済む傾向にあり、これは労働者だけでなく、事業者としても【来る前提で組んだ予定が変わる日数が少なくて済む】という意味では、メリットになりえる。

どうしても代勤者をたてないといけない場合も、週休2日の場合は1日休日出勤してもらったものの、その人に代休を取得させてあげられない状況になってしまうと、その労働者は週の休みが1日だけになってしまい、これはなかなかハードだ。

元が週休3日制であれば、1日休日出勤をしてもらうとしても、まだ2日休みが残っている状況になり、プライベートの予定調整もしてもらいやすい傾向にある。

 

6.ライバルが少ない

ただでさえ保育士が不足しているという中に新規参入する以上、何かしらの特徴がないと、採用が難航することは当然に予想できた。

2017年10月の開園時点で、保育士の正社員で週休3日制をうたっている求人は殆ど無く、「え?週休3日?」と関心を持ってもらう特徴であると推定された。

週休3日制は【1日10時間勤務】という、1日の労働時間が長いデメリットもついて回るわけだが(市役所にも、「長いのでは?」と心配されたが)残業や持ち帰りが多い業界では、【所定労働時間が8時間でも、10時間勤務が実態】というケースも少なくない。

ならば、残業や持ち帰り無しとワンセットで【1日10時間勤務】とする分には、【まぁ今もそのくらい働いているしな】と、週の休みが多い利点を選ぶ保育士が少なからずいるだろうと判断した次第だ。

Twitterで有名な保育士が関与した、愛知県の保育園が2018年4月開園で週休3日制を導入しているようだ。少しずつ保育業界でも週休3日制が増えていくかもしれないので、今後に関しては週休3日制自体が強みになることは減るかもしれない。)

 

 

週休3日制の場合は、正社員の在籍数をそれなりに抱える必要があるなど、デメリットも無くはないし、既に週休2日制で回しているところが週休3日制を導入するのは課題も多く、難しいケースあるだろう。

週休2日で1日が短い方がいいという人もいるだろうし、どちらが優れていて、どちらがダメというつもりもない。

とはいえ、週休3日制は事業者側にとっても、労働者にとっても、メリットといえる点があるのも事実なので、保育園に限らず、広く選択肢の1つとして周知されることで、多様な働き方に対応できる社会になるといいなぁと思っている。

 

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