ホワイトな保育園が出来るまで

ブラックだ、過酷だと言われる保育業界。ホワイトな保育園は実現不可能なのか?会計や労務を踏まえ、現場の裏話も交えつつ記載していきます。

持ち物への記名はなくせるのか(その3)

記名をなくしたい経緯はコチラ

sakura-mirai.hatenablog.com

 

解決の糸口編はコチラ 

sakura-mirai.hatenablog.com

 

【解決案】あらゆるものを園の備品として、使用料を保護者に負担してもらう

例えば、給食のお皿や玩具など、園全体の物を皆で使う場合には、どれが誰のかという問題は生じない。これは、「持ってきてもらう」ことも「持ち帰り」もしないからである。

とどのつまり、記名が必要な1番の理由は、「持ってきてもらう」ものを適切に「持ち帰り」させる必要があるからだということになる。

となれば、個人的な持ち物を排除してしまい、全て園で用意し、使ったら園で洗浄などをして園で保管をしておけば良いということになる。

しかし、この場合には以下のような課題が考えられる。

 

*登降園時に着用する衣類は家から着てきて、家に着て帰る必要がある。

この点は、制服などの指定服にすることで、登降園時に着用する服は1セットになり、記名は初回だけすればよくなる可能性はある。

→成長の著しい時期なので、サイズアップの回数などを考えても保護者の金銭的な負担が増えてしまう。

→登園した時点で園の備品の服に着替えさせるという工程が発生する。登園対応のある時間帯は玄関先に人員が1人とられるため、現場が手薄になりやすい。着替えという工程を増やす場合、残りの児の事故リスクが増える。また、分離不安で泣いていたり、不安定になっていたりするなどの児の心理状態や、お着替え自体がイヤイヤなどの発達時期などを考慮すると、大人の都合でその着替えのタイミングを増やすことが望ましいのか疑問がある。

→降園する際に、指定服に着替える必要がある。降園時間がバラバラなので、特定の時間に一斉に着替えてしまうと、降園までに汚れる可能性が高い。指定服制度にする場合には「なるべく指定服を汚さないでほしい」と思う保護者が発生する可能性は高いので、配慮負担が増える。着替え中の他児の安全管理や子供にとっての最善かという点では登園時と同じ課題も発生する。

 

*肌着や靴下、歯ブラシ、スプーンセットなどの衛生用品を共用することは出来ない。

この点は、指定商品を園を通して購入してもらい、それに園が記名をしてしまい、その後は園保管にしておくことで、解決出来る可能性がある。

 

*オムツなどの消耗品は費用負担をどう設定するのか。

この点は、保育料と同じく定額制での理解を求める必要がある。(使用量に応じた費用負担をとなると、使用量の記録をしなくてはいけなくなるため。)

ユニチャームのオムツ定額制は個人的には画期的な取組みだと思っているが、「自分で買って名前を書く方が節約出来る」と感じる人も少なくない。

tebura-touen.com 

 

*園での衣類の洗濯の手間が発生する。

この点は、洗濯(管理)費用を保護者に負担してもらうことで解決出来る可能性がある。

→人件費+水道光熱費の実費相当を割り出した最低限の徴収とするとしても、保護者にとっては追加負担になる。家庭の洗濯管理の手間が減っていることを説明するとしても、他の家族の分と一緒に洗うだけなので家でやれば追加の支払がないのにという心情は十分に起こりえる。(不満足度の増加)

 

*園で衣類の用意・管理が発生する。

この点は、中古衣類を活用することで、費用を最小限にして解決出来る可能性がある。

 

*導入を前向きに検討する際に、特に重要になること

・子供の最善

→1歳クラス後半から2歳クラスで既に「これは自分の、これは自分のじゃない」という意識がある。昨日は自分が着ていた服を、今日は別の子が使っているというような環境は、子供にとって混乱の原因とならないだろうか。

仮にこの服は常に〇〇君が着るもの、などと固定する場合には、結局「誰の」という管理が発生する。〇〇君は常に青、など特定の色を園児に固定してしまえば、「記名をせずとも所有者が判断出来る」やり方ではあるが、園児の情緒発達において望ましい方法とは言えない。(本人が好き好んで特定の色を身につけたがることは良いが、大人が決めてそれだけを使用することを強制することは望ましいとはいえない。)

 

→発達を考慮しても、自己だけの世界から、他者という存在への関心が育まれていく時期に、少しずつ自分の・お友達の・みんなの(一緒に使う、順番に使う)などの様々な場面を経験するという点でも、常に園のものを使うという環境が最善かという課題がある。

 

・保護者の心情

→記名忘れを殆どしていないと思っている保護者にとっては、現状のままでいいではないかと思う可能性が高い。特に、追加で費用の負担が発生する内容は、額の大小に関わらず心理的な抵抗が多い。十分な説明と理解を得る必要がある。

 

→記名忘れをしがちな保護者であっても、費用負担を避けたい気持ちは同じくもつため、十分な説明と理解を得る必要がある。中には、自己のミスを責められたと感じてしまう人もいる可能性がある。自己のミスを責められたと感じる人の中には、反省(自己嫌悪に陥る)というケースだけでなく、相手に対してかえって攻撃的になるケースもある。いずれにしても、そういった点を考慮すると、「記名忘れが多いので解決するため」ということをハッキリと言えない可能性もある。その場合に「十分な説明と理解を求める」ことは可能なのだろうか。

 

→マイナスな心理としては、今後の費用負担の発生(追加の支出)の点だけでなく、先を見越して(園で使うようになる前提で)多めに服を買っておいたのに(既に支出をしたものが無駄になる)、それならこの服には名前を書かなかったのに(既に記名をした行為が無駄になる、記名を本当はしたくない服だったのにという感情)なども考えられる。

 

・職員の負担

→登降園時の着替えの増加は明らかに保育現場での負担増なので、この点をよりクリアに出来ないと現場の最善とは言えない。記名状況の確認の方が楽(かつ安全に行える)となる可能性は高い。

 

【結論】

惜しいところまでいけたように思うが、現時点では今一歩。

引き続きいい案を考えてみたい。

 

園のHPはコチラ

sakura-mirai.com