ホワイトな保育園が出来るまで

ブラックだ、過酷だと言われる保育業界。ホワイトな保育園は実現不可能なのか?会計や労務を踏まえ、現場の裏話も交えつつ記載していきます。

賞与の加算額算定を世間に委ねてみる

Twitterの指定投稿の【いいねとリツイートの数×10円】を園の予算とは別で賞与加算金として支給することにした。

というのも、職員の夏季賞与支給を7月に控えて算定をしながら、「園の予算とは別に上乗せで払いたいな」という気持ちが今期はより一層強くなったものの、その額をどの程度にするかを色々と検討していた。

そんな時に、少し前Twitterで「#保育士さんありがとう」などの気持ちを表明してくれた動きを思い出し、世間で応援してくれる人の気持ちを何らかの方法で形にして現場に還元をしようと思った次第だ。

職員にも【世間からの頑張れの思い】を形にした加算だと説明したいので、是非とも、いいねやリツイートをしてほしい。

なお、上記の基準で算出した額は全額を自己負担で用意し、職種や経験年数を問わずに、所定労働時間に比例した額で全職員へ配分をするつもりだ。

※通常の賞与はきちんと業務の内容や役割、能力などで算定をし、園の予算の中から支給をする。何も適当に賞与を払おうとか園の予算で遊ぼうということでない点はご理解いただきたい。

 

こんなことを思い立ったのは、やはり2019年の上半期には、保育園や保育士に強く影響のある事件が多かったように感じ、【保育園で働き続けてくれることそのもの】に感謝を込めて加算をしたいと思ったからだ。

不測の事態、不慮の事故というのは、自然災害も含めて、職種や状況を問わず誰しもに訪れるものだが、【保育園で働くからこそ巻き込まれてしまう可能性のある】事象というものも確かに存在し、【保育園で働くことを選ばない】だけで自分の身には起らないように出来ることもまた事実だ。

特に、園庭の無い当園では、(それが保育として望ましいかの議論は別として)園庭から外に出ずに外遊びをするという選択肢すら無い。

戸外活動は欠かせないという判断のもと散歩を継続しているが、現場職員は追突事故後はより一層の神経をすり減らしながら、無差別殺傷事件後は万が一への不安感が増しながらの戸外活動に臨む様子がある。(当然に子供達の前ではそんな様子は見せていないが。)

保育士に限らず、調理や事務の職員も含めて、常に他人(それも幼い子供)の人生のリスクを背負いながら働かないといけないのが保育園という場だ。

例え事故や事件がなくとも、常に気を張って、子供達の安全を第一に真剣に保育はしているが、【まさか】の事故や事件を現実として受止めた時、人間の心情としてより一層のプレッシャーや不安感を抱いてしまうのは当然だろう。

どれだけ配置を手厚くしても、残業をなくしても、機械化や効率化で働きやすい環境へと尽力しても、人間である以上、職員自身がこういったプレッシャーに耐え続けることが心理的に難しくなってしまったら、保育園で働き続けることは出来ない。

わかってて選んだ仕事だとか、医療従事者はもっと重いとか、運転手はもっと多くの命を預かっているとか、色々と言い出したらキリはないし、保育園の関係者だけが苦労しているとか、特別だとか言いたいわけでも無い。

それでも、この仕事を選び続けてくれる職員達のおかげで子育て世帯の支援や、次世代への支援が出来ることも事実なので、どうかより多くの人に「お疲れ様」の気持ちで寄り添ってもらえたら嬉しい。

 

ちなみに最初はクラファンなど、財源自体を皆さんから支援してもらう案も考えた。というのも、個人的には、中長期では保育事業には企業や個人を含めた様々なスポンサーがつく寄付的な仕組みが一般になり、公的資金以外の予算がもっと増えるといいとも思っているからだ。

公的資金はどうしても不正防止や無駄遣いにならないようにという点の考慮面も強く、また、どこからが贅沢(無駄遣い)でどこまでが必要な支出かという基準も、個人の価値観の差も大きいため、制度的な予算の充実へのハードルは高いと思っている。

ただ、いきなり「もっと保育関係者の待遇をよくしたいから、お金で支援してください!」と言うのも違うよなと思い、まずは「保育業界、頑張って」と思ってくれる人の声を、自力で形にして現場に還元する行動から始めようと思った次第だ。

保育料無償化など政策への色々な意見が出ることや、保育現場が声をあげていくことも当然に大切だと思っている。一方で、不満表明や批判とか議論とかだけが続く状態だと、少し気が滅入ってしまうようにも感じている。

不満も改善点も多いけど、それが変わるまでに時間がかかる以上は、声もあげつつも、変わるまでの間も頑張り続ける現場の人たちが、希望を持って頑張っていけるような気持ちにもなれる雰囲気も、同時に作っていきたいと思っている。

せっかく保育現場への気持ちを世間が持ってくれて、多くの人がそれをネット上で発信してくれるなら、それをちょっぴり楽しくなるような形で現場に還元出来るやり方に出来ないか、そんな風に願って行動にしてみた。

 

※資金での支援自体は非常に助かるので、もしも「これも賞与に加算して」というお気持ちをいただける方、企業さんが居れば、是非メールやTwitterのDMなどからご連絡を頂ければ嬉しいです。全額を賞与加算として職員に還元します。

 

twitter.com

 

最後に以下は余談だが、当園は内閣府からの補助を受けながら運営しているものの、これは利益が出るような仕組みではないことは以前の記事のとおり。

sakura-mirai.hatenablog.com

sakura-mirai.hatenablog.com

なので、算定根拠として利益の何%を加算とか、余剰金を賞与加算で払うなどの選択肢はそもそも存在しない。

また、直近で園歌を作ったとか、アニメーションを作ったとか発信をしているので「そんなお金があるなら、それを職員に払えば?」と考える人もいるかもしれないが、それらは当然に園の予算からは出ていない(そもそもが自腹)ということは念のために添えさせてほしい。

 

※本件に関するご意見やご質問はメールにて承っています。

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