ホワイトな保育園が出来るまで

ブラックだ、過酷だと言われる保育業界。ホワイトな保育園は実現不可能なのか?会計や労務を踏まえ、現場の裏話も交えつつ記載していきます。

保育園で毎月必要なお金の話

保育園(定員12名の小規模、企業主導型保育事業活用、茨城県)の1ヶ月の収入は220万円、支出は250万円くらいという話を以前記載した。

sakura-mirai.hatenablog.com

 

今回は支出について、より詳しく記載していこうと思う。

*人件費:150万円(賞与を含めた年額を12カ月按分)

保育従事者(0歳3名につき1名、1歳6名につき1名、2歳6名につき1名、総合プラス1名などの基準の対象者)は保育士(有資格者)のほか、保育補助員も対象となっていることがある。

ただし、保育士の比率が高いほど、補助金の基準額が高くなっており、比率を下げる(無資格者の雇用が多い)場合は収入も減る。無資格者の方が賃金(支出)が下げられても、収入も下がるので、利益が残せるということはない。(不正を除く)

当園では配置基準よりも少し手厚く保育士を採用しているが、園長は2名分のシフトに入りつつ、賃金は1名分としている実態もあるため、差引ゼロ(配置基準ギリギリまで雇用を抑えても150万円くらいはかかる)だろう。

 

法定福利費:18万円

労災保険雇用保険、健康保険、厚生年金は法律の基準通りに加入となり、事業主の負担額も定められているため、カットすることは出来ない。

正社員の3/4以上勤務(週30時間以上目安)で健康保険と厚生年金に加入が義務のため、正社員1人分のシフトをパート2名で当て込むなどすれば、保険料の削減すること自体は可能ではあるが、採用面や保育の面で考えると、可能な限り正社員のシフトは正社員に勤務して担ってもらう方がいいと考えている 

 

*地代家賃:35万円

テナントの賃料のほか、駐車場代を含む。都内の場合は電車通勤も可能かと思うが、地域によっては、車ありきということも多い。駐車場は保護者が送迎時に使う分と、職員が停めておく分を借りている。

ちなみに地域の割には賃料は少し高い。マンションや戸建てが多く、2000万円しないで土地から戸建てが建てられるのがウリというチラシも多く入るエリアだが、事業用のテナントは少ないため、事業用の家賃は高い傾向に。

ちなみに、総合的な判断により、別途スタッフルーム(兼物置)の賃貸物件も用意している。これは補助金の対象にはならない(可能性が高い)ので、支出としては生じるが収入のあてがない(事業主の自腹)という状況だ。

もちろん、園内にスタッフルームがある分には、賃料補助の対象となる。ただし、そもそもとして面積に応じた補助金の上限額も細かく設定されているため、園児定員とそれに必要な床面積に対してギリギリの水準でしか補助は出ないと考えた方がいい。スタッフルーム無しとすればお金はかからないが、近隣にカフェなども無い上に、朝から神経を張り詰めながらの重労働で、心身を休める場所がないというのは酷だろう。

 

*給食、おやつ、麦茶代:15万円

給食は園内調理または専用のお弁当などの外部調理品の搬入から選択となる。搬入の場合には、専用の調理施設などの要件があり、スーパーやコンビニ商品、一般的な仕出し弁当などは不可。園内調理の場合、設備(器具、食器)などの費用もかかるほか、調理員の人件費や光熱費が別途かかる(15万円には含まれず)

また、献立は栄養計算を行って適切に毎月定め、それに基づいて調理をすることや、台帳作成など必須書類や規定が多数ある。その点を考慮して、当園は献立や各種台帳などの作成から毎日の食材配達まで総合で担ってくれるサービスを活用している。

www.taiheig.co.jp

金額だけを考えると、園で献立作成から食材購入まで行う方がもう少し安く出来る可能性もあるが、人的負担や管理負担なども多くなることから、上記サービスを利用する方が総合的に効率的だと判断をした次第だ。

出来立ての手作り給食、手作りおやつは園児にも好評で、個人的にはお弁当よりは園内調理をお勧めしたい。

 

水道光熱費:6万円

調理はIHのため、電気を使用。夏はエアコン(冷房)で電気代がかかる。床暖房はガスを使用しているので、冬はガス代がかかる。

水道は手洗いやトイレのほか、調理、洗濯、水遊びや動植物に使用。

いずれも必要以上に無駄遣いをしないようには気を付けているが、保育の充実や安全(健康)管理を差し置いてまですべきことではないので、無理に削減しすぎないようにとしている。

 

*通信費:2万円

ランニングでかかっているのは固定電話(FAX)とネット、スマホ2台、ガラケー2台。園長のスマホ以外は、通話のみでの契約。スマホiPadは園内のWi-Fi接続でネットを使用している。

保育業界に参入して驚いたのはFAX使用率の高さだ。保育関連の業者もFAXでのやり取りが前提のところが多い。せめて業者はメールも対応してほしいなぁと思うことがある。

 

*園管理システム:1万5000円

行政提出の書類関係や、園児の管理(連絡帳、登降園管理)で使用。www.codmon.com

1月から上記に移行し、職員の出退勤管理やお昼寝時のチェックなども全て一元管理が実現した。

 

*衛生用品:1万2000円

空気清浄機2台と玄関マット、モップをレンタルで使用。ちなみにダスキン

レンタルでなく購入にすればランニングコストが減るのでは?という考え方もあるだろうが、その場合は管理を自分達でしなくてはならない。保育士が空気清浄機のフィルター交換だの、マットやモップを洗って乾かして・・・という手間をかけるのは違うと思っているし、私も全体のバランスを考えるとそこまで手が回らないので、外注する方が効率の良いことは外注としている。

 

*警備システム:1万2000円

24時間録画の防犯カメラを室内2か所に設置。不審者対策だけでなく、万が一の園児の事故発生時の検証にも使用する。加えて、非常ボタン(警備会社と警察に通報できるもの)を2か所に設置。夜間警備のほか、裏口は電子錠で管理している。

安心安全代として削減しない方がいい部分だと考えている。ちなみにSECOM。

 

*検便代:1万円

食中毒や集団感染の防止のため、給食の調理員だけでなく、食事の介助をする職員は全員に毎月1回の検便が義務付けられている。

検査代は安いと1人あたり500円~あるが、1ヶ月の利用職員数に応じるほか、キットの送付方法や送付費用などもあるため、園規模と利便性に応じた会社の検討が必要。

当園はコチラにお願いしていて、対応も早く丁寧で助かっている。

www.morewell.co.jp

正社員も週休3日制ということで、なかなか全員が揃わないほか、子持ち職員が殆どなので急な欠勤リスクも高い。そうなると園で指定日に回収して送って、というのが難しいことがあるので、各人が上記に直送(送付状況管理は先方がしてくれる)という形で、少しだけ1人あたりの値段が高い。

 

*ネット関係:1万円

LINEWORKSを職員の連絡ツールとして使用。職員毎に料金が発生するが、プライベートのLINEの使用は個人情報保護や労務問題の観点から望ましくないと判断。

HPはワードプレスで自作しているので、その点は無料。ドメインやサーバー代は発生。

 

*消耗品:10万円

教材費や研究費(保育士のスキルアップのための書籍代など)、玩具や文房具、動植物の育成にかかるもの、清掃用品などなど。開園からまだ歴が浅いため、少しここの額が大きいかと思う。一度買ったら長く使えるものもあるため、もう少し削減できるかなとは思っている。

 

*利息:2万5000円

開園時の借り入れの利息。あと5年ちょっとでなくなる予定。頑張ろう。

 

*その他:5万円

車両費(買い出しなどに車が必須の地域。いざという時に園児を病院などに連れて行くのにも必要。)や各種専門家への相談料(顧問料)、福利厚生費など。高額な支出のための積み立てや採用費などに充てることもある。

 

ざっとこんな感じだ。いかがだろうか?お金が無いなら、こんなに支出をしない工夫をすれば?と思う人もいるかもしれないが、規定上必要な内容が大半なほか、適正に保育をしつつ保育士が疲弊しない環境を維持するには必要な経費も多い。それをカットすると、結果的に保育士の労働が増える=人件費増、というだけだ。

これを人件費として適正に払わないブラックが蔓延しているが故に、支出が減るから買わずに保育士が作ればいい!とか、IT化するとお金がかかるから手書きで十分!とか、変な方に経費削減が向かってしまっているケースもある。

廃材で試行錯誤して教材を作る人件費より、ダイソーでちゃっと用意してしまう方が安いということはないか?「昔は全部手作りした」という人もいるが、昔はダイソーが無かったり、一般消費者として入手できる商品の種類が少なかったりしたからではないのだろうか?

確かに、保育専門用品は高い。でも、安い値段で様々な商品を入手しやすくなった今の時代、代替品を安く買えることも多い。見た目には支出でも、同じく支出であるはずの正当な人件費と天秤にかける場合には、買った方が安いということは少なくないのではないか。

ということで、上記の支出について、無駄遣いをしないような気持ちは持ちつつも、必要以上に締め上げていく気はなく、しかも欲を言えば、人件費はもう少し払えるようになりたいと考えている。理想は高く!!!

 

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