インプットを増やさないとアウトプットできない
4月から保育士が7名体制になる。正社員が5名(うち1名は産休)、時短社員が1名、パート1名。私も保育従事者として入るとなると、総勢8名。シフト制とはいえ、最大園児数12名の園としては、多いだろう。
収支の話でも書いたとおり、園は赤字だ。それでいて、更に人件費をかけるとは頭が悪いのか?という話に見えるかもしれない。
上記の状態に更に2名の保育士が増えるわけだが、1名は産休育休で人件費がなくなるので、そこで支出はプラマイゼロ。
もう1名は自らの子を入園させながらの就職になるため、人件費が増えても収入も増えるので、そこまで大きくは負担が増えない。
体制が整い次第、私が現場に入らない時間を増やせそうなので、私の分の人件費を下げ、その分は園以外の業務を担って自分の稼ぎを他で上げる。
ということで、人員が増えても今よりも大幅に金銭的に困る状況ではない(という計算)になっている。
では、産休育休から職員が復帰して、その時点で今の人員が全員残っていたら、どうするのか?誰かを辞めさせる?まさか!人員が十分にいるならば、【保育園以外の展開で事業を充実】させていけばいいのだ。
例えば、リトミックに挑戦したいという保育士がいるとしよう。
資格取得には講習の定期的な受講が必要になるが、現場の人員がギリギリの状況ではそういった受講は難しくなってしまうことがある。
日曜などを活用する選択肢もあるが、子育てと仕事を両立しながら、更に休日も潰して資格取得を目指すというのは、相当にハードであり、周囲のサポート体制に恵まれていない限り難しいだろう。
では、現場の人員が十分に足りていて、受講を仕事の一環として出来たらどうだろうか?勤務時間の一部を現場に入らず受講する違いだけであり、職員としても負担なく資格取得が出来るだろう。
そこで学んだことや得たスキルを現場で活かしてもらえば、保育もより充実するだろうし、外部講師を招くよりも柔軟に保育に取り入れることができる。
これは何もリトミックに限らず、様々な研修や勉強など、インプット全般に言えることである。
ただでさえハードワークの保育士が、数少ない貴重な休みを潰して、更に自ら支出をしながら講習を受け、それを保育に反映して保育の質を高めなさい!と言われても、それを実践し続けられる人がどれだけいるだろうか。
保育現場に入り、それを振り返ってまた再構築して・・・という現場に関する時間も大切だが、それとは別にインプットの機会を【仕事として】設けないと、いくら保育の質の向上を!と叫んでもアウトプットできるものが増えないのである。
手持ちの武器を増やせないまま、【今まだ無い強みの実現を】と言われても、無から有を生むことは出来ない。
では、【仕事として】インプットできるようにするには、どうすればよいか?
・雇用する保育士を少し多めにして現場の人手が足りなくならないようにする。
・勤務時間として講習を受けられるようにする。(講習費用を負担したり、講習時間分の時給を発生させたりする。)
上記2点が必要だ。これらによって支出は明らかに増える一方だが、その後に保育の中で回収は出来るのだろうか?
企業主導型保育事業では、原則として補助額は園児数に応じて算出されるため、保育士を増やそうが、研修に参加しようが、プラスの補助金は無い。そうなると、保育料の値上げしかないが、基準額の保育料よりも多く保護者から徴収するには【特徴のある保育】を欠かさず実行している必要がある。
例えばリトミックを【特徴のある保育】としてしっかりとカリキュラムに導入し、その費用を保護者に負担を求めることは理屈上は出来なくない。
しかしながら、勤務先の提携園として選択する、或は認可園に入れずやむを得ず入るしかないという選択をする、という保護者が大半の状況において、【リトミックを導入するので値上げします】というのは魅力的な選択肢だろうか?
もちろん、希望する人もいるかもしれないが、3万円の保育料でもいっぱいいっぱいだという世帯があることもまた現実である。
特に、【大人にとってわかりやすい明確な成果(物)】が発生しづらく、子どもの気持ちのムラも激しい0,1,2歳のうちは、価格に見合うだけの価値があるかどうか(やりたがらないことをどこまで強制するのか、参加しなくても返金は無い)などを納得してもらうのも難しい可能性が高い。かといって、現場状況としても希望選択制をとるというのも非現実的だ。
ではどうするか。
リトミックなどのプラスαの要素は、【保育園】の収益での回収を目指すのではなく、【保育園以外の展開】を事業として行うことで、そちらの収益で支出を賄おうということを目指している。
これであれば、【保育】にも要素を適宜取り入れつつも、無理やり子どもにカリキュラムをこなそうとし過ぎる必要もなければ、望まない保護者に強制的に受講(費用負担)をさせる必要もないし、参加不参加の管理や金銭トラブルも起きない。
【保育】以外の場での開催とすることで、リトミックを体験してみたいと思っていても、なかなか近場で手ごろなものがない、という地域の親子の行き場を作ることもできる。
そして保育士もまた、個人事業として教室を展開したり、Wワークで複数の勤務先に雇用されたりするよりも、リスクや負担が少なく、様々に活躍をしていくことが可能になる。
仮に当園に万が一のことがあっても、それぞれの保育士のスキルが高くなっていれば、その後も【とある企業主導型に〇年勤めました】というだけよりも、選択肢の多い人生を歩めるだろう。
繰り返しになるが、リトミックに限らず、個人がインプットの機会を増やして成長をしてほしいのは組織としての希望でもあるが、現場業務だけで実現できることにも限りがある。しかし、個人が賄える金銭や時間の負担にも、どうしても限界がある。
ならば、組織がそれをバックアップし、更に還元する場を作っていくことは、短期的には職員のプラスに、中長期では地域や組織自体のプラスになるのではないか。
自分で時間もお金も捻出しないといけない、となると無理だと諦めがちなことも、「支援してくれるなら挑戦してみたい!」という気持ちを前向きにもち、目標や夢を保育士も抱きやすくなるのではなかろうか。
より多くの保育士が無理をし過ぎずに、様々なことをインプットする機会を得て、同時により多くのアウトプットの場や機会を得ることが出来れば、保育の質の向上として園にもプラスがありつつ、地域社会の役にも立ち、費用面もクリアしつつ多面的な戦力を持って組織としても成長が出来るという、みんなハッピーな状態を作れるのではないか。
理想論かもしれないが、非現実的というほどでもないと考えている。タイミングよく人員も充実し、実現可能な地域状況の見通しも立っているため、今年、当園はその第一歩を踏み出す。吉と出るか凶と出るか、見守っていただければと思う。
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