ホワイトな保育園が出来るまで

ブラックだ、過酷だと言われる保育業界。ホワイトな保育園は実現不可能なのか?会計や労務を踏まえ、現場の裏話も交えつつ記載していきます。

不採算部門でも園運営をする4つの意義

前回は【保育園で予算(補助金)が足りないなら、母体の事業から資金投入すればいい】というようなことを記載した。

 

sakura-mirai.hatenablog.com

 

母体の事業(別の利益)から引っ張るといっても、不採算部門はそもそもカットするのが事業としては効率がいいのでは?という疑問を持つ人もいるかもしれない。

 

それは最もな話で、収支モデルを見て【やらない】という選択をする事業者も実際にいるし、それも一つの選択だろう。

では【不採算部門でもやる意義】があるとしたら、それはどんなことか、私なりの見解を記したい。

 

1.福利厚生費と考える

既存の企業が自社で保育園を作る場合には、保育園の運営側で赤字が出るとしても、それは母体の企業全体の福利厚生費だと考えることができる。

というのも、自社に園があれば、産休育休あけに復帰したくても待機児童問題で復帰できないという職員が減り、そういった職員の働きが更なる生産性の向上(母体事業の収益増)につながると考えると、福利厚生費といえなくもないはずなのである。

 

2.広告宣伝(採用)費と考える

自社に保育園あり、というのは【社会問題に対して取り組んでいる】というプラスの印象を世間に訴えることもできる。

前述の福利厚生と絡めれば、【従業員を大切にしている企業だ】というPRにも出来るだろう。

消費者なり顧客はよりいい印象を持つ方、応援したくなる方を選ぶ(=母体事業の収益増)と考えれば、これまで広告費に使っていた数万円を園運営に回す、という考え方もできるだろう。

また、産休育休からの復帰がしやすい=離職率の低下にもつながるため、採用費の減少にも効果が期待できる。

新規採用時にも、【将来的に結婚して出産をしても、安心して働き続けられるな】という印象につながり、若手の採用に有利な条件としても使える。

人手不足の中では、より離職者を減らし、求職者が集まりやすい条件を持っているほど、採用にかける費用を抑えられるため、求人にかけていた費用を園運営に回す、という考え方もできる。 

 

3.社会的意義

福利厚生、広告宣伝というのは自社にとってのメリットを考えた場合の話が主軸だが、自社のメリットに直結しなくとも、風が吹けば桶屋が儲かる式に巡り巡って、社会全体がよくなる(結果、自社にも中長期でプラスが期待できる)側面がある。

 

例えばより多くの雇用を創出でるようになるという点。

【働きたいのに預け先の問題で働けない】層の活躍の場が広がると、各世帯の収入増が見込め、消費活動を促進できる可能性も増える。

働きたいのに働けない、という状況においては、家庭でも【収入増が見込めない以上、なるべく使わないようにしよう】となりがちで、消費活動が停滞してしまうからだ。

 

或いは、自社以外の受け入れもする場合、その労働者の勤務先全体にとってプラスになるという点。

育休明けで復帰を予定していても、結果的にその労働者が復帰できないとなると、【いつ待機から入園になるかわからない】という期間が生じてしまう。

事業者側としては、その不確定な状況に関して追加採用で補うのは少し難しい点がある。そうなると、他の労働者達に残業や休出などの負担がかかってしまう可能性が高まるだろう。

他の労働者達にもプライベートや家庭があるわけで、1人の復帰により、それぞれの負担が減ることが出来れば、その背後の家族などにも良い影響があるといえよう。

残業続きでプライベートと仕事が両立できなくなり、退職を考えた職員が辞めずに済むかもしれない。

パパの家庭不在状態でワンオペに苦しむママが減るかもしれない。

自社以外の待機児童を受け入れることは、直接的には自社の利益にならないかもしれないが、上記のように少しでもハッピーな状態の人が増える状態を作れることは、社会的に消費を促す要素になりえるだろう。

 

もっと言えば、ライフプランを考える中で、【本当は子供もほしいけれど、復帰後の大変さを考えると諦めざるを得ない】というようなケースの解消にもなれば、少子化(今後の労働人口や消費者人口の減少)の対策にもつながり、将来の自社の労働力や、顧客(消費者)の減少を回避するという見方も出来るだろう。

 

当然にそう単純な問題でないことはわかったうえで、消費活動が活発になることは、経済的な効果もあり、社会全体がよくなる、ひいては自社にもいい影響が巡り巡ってくる(=直近では不採算でも、中長期で自社にもプラスが見込める)と考えることも、誤りではないはずだ。

 

 4.子供は可愛い

散々理論で書いておいて、最後はこれか!という、もう本当にただの個人の感情の話だが、子どもは可愛い。そして未来への希望が詰まっていて、それだけでも十分に保育園を運営する意義はあると思っている。

自分の子も当然に可愛いし、我が子のように愛情をもって保育に臨むのは当然として、経営者(運営)側から見る園児は、どちらかというと孫とか親戚のような感覚だろうか。

経営陣が保育園部門は毎月赤字!とピリピリするのでなく、我が孫可愛さについ、毎月色々とお金をかけてあげちゃって・・・くらいに思ったら、気持ちよく保育園部門の不採算を受け入れられる・・・かも?

 

余談だが、私がそもそも園を始めるきっかけになったのも、根っこは感情だ。

自分もかつて保育園にお世話になり、当時の先生たちへの感謝はもとより、保育園でのびのびと成長した子どもたちを見て「保育園っていいなぁ」と純粋に思った気持ち。

【おばあちゃんになった時、保育園にばーんとお金を出して理事長とかになって、それで毎日掃除とか花壇の世話とかをして、のんびりと園児を見守ってるポジションがしたいかなぁ。】

そんな夢物語をポロっと話したことから、様々なご縁とタイミングと協力のおかげで、おばあちゃんになる前に園長になってしまったのである。

おかげ様で掃除も花壇の世話も夢が叶っているが、肝心の【のんびり】は数十年後までおあずけのようだが・・・。

 

ちなみに、保育園単体で収益がある状態になることが、一番の理想ではある。ただ、現状ではそれは難しく、収益を求める場合には、どこかが苦しむ(我慢をする)状況になると感じている。

せっかく母体事業のある企業が参入してくれても、保育園部門に対して少しでも赤字を抑えろ、少しでも採算が合うようにしろ、となってしまうと、予算(補助)の中で悪戦苦闘している状況と変わらなくなってしまう。

だから、せめて保育業界水準が今のようにかなり厳しい状況にあるうちだけでも、不採算は前提だから、お金は気にせず子ども達がのびやかに過ごせて、保育士が疲弊しなくていい環境でやっていけるようにしなさい!さぁこれが潤沢な予算ですよ!ばーん!と母体の企業には思ってほしいなぁという願いで、赤字もこう考えたらただの損失ではないのでは?という4パターンを提案した次第だ。

 

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