ホワイトな保育園が出来るまで

ブラックだ、過酷だと言われる保育業界。ホワイトな保育園は実現不可能なのか?会計や労務を踏まえ、現場の裏話も交えつつ記載していきます。

保育園の開園時点で必要な物とお金の話

保育園の内装工事で2500万円という話を以前、記載した。

sakura-mirai.hatenablog.com

 

ここで補足しておきたいのが、工事費のうち、内装工事の3/4額は企業主導型保育事業で内閣府から補助金をいただいている。

つまり、自腹なのは内装工事費の1/4額+設計料だ。

設計料に関しては、内装工事とはいえ、図面を作ってもらうだけでなく、採光などで保育園としての要件があったり、消防など各種法令や行政とのやり取りがある。基本的にこのコストはカットせず、建築士に依頼すべきだろう。開園届やその後の様々な申請、監査などを考えても、しっかりとした図面や根拠資料が整っている方が確実だ。

 

では2500万円もお金がなくても、保育園が作れるのか?と言うと、そうではない。補助金の対象にならないもので、開園までに必要な諸費用が多くあるからだ。

物件の敷金や礼金、不動産屋さんに払う手数料も補助の対象外で、当園の場合はこれが160万円くらい。 

他に開園までに必要な設備や備品でざっと目安で350万円くらいかかった。

ということで、定員12名の小規模園(園庭なし)で、建設費を3/4も補助してもらっても、なんだかんだと1400万円くらい必要だ。

 

余談だが、保育専用の商品はとにかく高い。内装工事でも小児用の便器などの価格に施工業者さんも驚いていた。競合が少ないので価格競争が生じにくいという背景もあるようだ。

一般の量産品で代用できるものはなるべく安く抑える一方で、保育面(発育や食育の観点)や安全面(指挟み事故など、お金には変えられない、子どもの安全を守るための観点)、衛生面(食中毒や集団感染防止などの観点)で重要な部分は、それらを優先してコストカットしすぎないようにもしている。

 

設備や備品の主だった高額出費が以下の通り。

・保育専用机:1つ10万円くらい×2(これはもう少し安い商品もある。当園では、異年齢保育なので柔軟に高さが変えられたり、移動しやすかったりなどから少し高い商品になった。高いが、面取り加工や指挟みなどの事故防止対策は専用品の方が安心だ。)

・調理関係:40万円くらい(冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、フライパンや鍋、食器など。家庭用調理器具を中心にしつつも、複数のおかずを作りつつ18食分調理するためには、数や容量も必要になってくる。)

・玩具:総額10万円くらい(これは開園までに一度に揃えずとも、少しずつ増やしてもいいだろう。とはいえ、少ないと噛みつきなどが発生しやすくなるので、気を付けたいところ。なるべく、綺麗で状態のいいリユース品などを活用して費用を抑えた。)

・ベビーチェア、椅子:総額10万円くらい

・電子ピアノ:10万円くらい(もっと安いものでもいいと思うが、常時保育室に設置しておく点では脚のしっかりした商品の方が安全。)

・ロールカーテン:8万円くらい(西日が強く入る構造のため必須。)

・散歩カート:1台8万円くらい×2(手をつないで歩いてお散歩に行けば要らないと考えることも出来るが、しっかりと集団行動が出来るのは3歳以上。周辺道路状況から安全を最優先し、公園でしっかりと身体を動かす時間を確保する目的でも、園児人数が乗れる2台分を揃えた。散歩カートは避難車も兼ねるため、基準でも0歳は保育士1人で3人、1,2歳は保育士1人で6人という配置の中、いざという時にそれだけの人数を安全に避難させられるか?という論点でも、カートは揃えた方がいいだろう。)

・絵本代:5万円くらい(絵本は充実させたかったので、多い方かもしれない。ブックオフなどでリユース購入にして費用はなるべく抑えた。)

・パーテーション:4万円くらい(異年齢保育で年齢区分に応じて仕切ったり、寝ている児と起きている児を仕切ったりが規定で必要。)

・固定電話:4万円くらい(FAXと複合機を兼ねて。子機付き。)

iPad:4万円くらい(ITシステムを導入したので、登降園管理などで1台は必須。)

他に掃除機や加湿器(季節によっては除湿器)と室温計や時計(室温と湿度にも基準があって管理するほか、毎日の計測記録が必要)、救急セットや嘔吐物処理セット(集団感染防止のため)、お尻拭きやオムツなどの予備品、物干し関係、調味料、文房具、タオルや石鹸、洗剤など。

 

当園では買わずに済んだので上記の目安額に含まれないが、必要なものとしては

・事務室や調理室のエアコン、パソコンなどはスポンサー企業に寄贈いただいた

・洗濯機は新古を無償で譲ってもらった

・予備の服、玩具などはリユース品を多数、無償で譲ってもらった

ふるさと納税の活用や、プレゼントとして玩具を提供してくださった人がいた

ということで、ざっと1500万円くらいは見ておく方がいいだろう。

 

また、補助金制度を使う場合、国に助成の申請をして審査を経て、その承認後に支払われるというタイムラグもある。補助金が入金されるまでは毎月の収入はほぼゼロ円という数ヶ月が生じる。

補助金が入って来るまで、スタッフはお給料待って!業者も各種支払待って!というわけにもいかないので、その期間は事業者自身が立て替えて払っていく必要がある。

ということで運転資金もある程度は必要になるので、結局のところ、工事費の補助をしてもらった上で、別途2000万円~2500万円は保育園の開園前に必要だということになる。

私はそんな額をポーンと出せるほどお金持ちではないので、これらの資金は銀行とスポンサー企業からの融資に頼って、開園にこぎつけた次第だ。

 

 

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