ホワイトな保育園が出来るまで

ブラックだ、過酷だと言われる保育業界。ホワイトな保育園は実現不可能なのか?会計や労務を踏まえ、現場の裏話も交えつつ記載していきます。

収入から考えるか、支出から考えるか

前回までは、保育園のお金の状況について、ざっと記載してきた。

sakura-mirai.hatenablog.com

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さて、事業では収入と支出の差が利益になるため、利益を出すためには【支出を抑えながら収入を増やす】ことが出来ればよい。

しかしながら、保育に関しては、園児1人あたりの床面積が法律で定められているため、その園の収入の最大値は決まっている。

(簡単に言うと)園児数×基準額が収入である限り、基準額(=行政の決める予算)が増えない限り、それ以上収入を増やすことは出来ない環境だと言える。(入園金や寄付を募るなどを除く)

 

その結果として、【とにかく支出を抑える】ことを重視する環境が生まれやすいと考えている。

サービス残業や無償の持ち帰り仕事が増えたり、昇給や賞与がないのは人件費をおさえるため。

あらゆる文房具を保育士が自前で揃えておくことは当然とか、パネルシアターなどの高額教材や、玩具を増やすことすら保育士の自己負担という話も少なくない。

冬は暖房費という予算がつくが夏は予算がないのでエアコン禁止(某県政令指定都市の認可園で!)とか、コピーはお金がかかるから許可制でなるべく手書きで写す(書き写している時間の人件費はサービス残業だから0円)とか、異業種から参入した身にはビックリする話の多いこと、多いこと。

当然に一部の園の話であり、そうではない園も多い(と信じたい)が、保育士の中には「そんなの序の口」と感じる人もいるだろう。

 

少し前に、関西の認定こども園で適切な量の給食が与えられていなかったなどの問題が発覚した事件があった。

他の要素を含めても、この園の不適切な運営実態を擁護する気はさらさらないが、食べムラの激しい時期の子どもの給食では、相当な残飯が生じることも少なくない。

「少しくらい発注を抑えても」「どうせ食べないから最初から量を減らせば、その分のお金を他に使える」などという心理が働いてしまい、いつしかそれがエスカレートしてしまったという可能性も、わからなくはない。(繰り返すが、だからといって事業者の責任としてこれは許される行為ではない。)

 

補助金の予算というのは、公費(税収など)という意味では、好き勝手に無駄遣いをしないという精神は大切だろう。

だが、それが本末転倒になっていないか?本当に必要なものにお金をかけないようになっていないか?という視点も常に持ち合わせる必要はある。

 

それぞれの園に様々な理由や背景があるのだろうから、他園のことを批判したいわけではない。

ただ、当園に関しては【収入がこれだけだから、その中で支出を決めよう】というスタイルではなく【その支出は合理的か、可能な限り最低額になっているか】で判断をし、合理性のある支出で、無駄に高くないものはどんどん取り入れる。

その上で、割り当てられた予算では足りない分は、【他で補う】という方針にしている。そうでないと、【目指す保育を実現し続けながら、従業員に最低限の労働環境の保障を実現するために、本当に必要な予算】がいつまでたっても見えてこないからだ。

従業員に無理をさせ、子ども達に満足のいく環境が提供できず、とりあえずなんとか回しています、という環境に未来はない。

 

また、【保育業界の仕組みとしてお金がない(から出来ない)のは仕方ない】【行政次第なのだから、頑張っても変わらない】という思考にどっぷり浸からないようにとも意識している。

そもそも、どの事業でも【今の人員(店舗面積)で売上られる限界】や【今の会社の資金(借りられる限度)で投資できる環境の限界】【今の原材料費で提供できる商品の価格の限界】など、様々な限界がある。

その限界を突破してさらに目指したいことがあるのか?あるならどう突破するのか?という時に【これ以上はお金が無いからタダ働きしてね】【これ以上はお金が無いから約束と違うサービス内容で我慢してね】とする企業はいないだろう。

認可園(特に公立)は様々な規定から身動きが取れない面もあるだろうが、少なくとも企業主導型保育事業は、そもそもが【母体となる企業】が作る保育園なので、【足りない分は母体の事業から賄う】という選択が出来るのである。

予算(補助額)にとらわれ過ぎないことで、より良い保育を目指しながら、ホワイトな労働環境を作ることは決して非現実的ではなく、企業主導型だからこそ率先してそんな園を目指すことが大切なのではないかと考えている。

そして、こうやって発信をすることで、少しでも保育士や保育現場の環境改善につながれば、と願ってやまない。

余談だが、偉そうに【母体の事業から賄う】と言いつつ、当園の場合は母体企業が保育園運営を主としているので、これから他の事業部で収益を引っ張ってきて保育園側に投入していこう!という、ちょっと順番が前後した状況だ。頑張らねば!なぜそうなっているのかなども、また更新していこうと思う。

 

<オマケ>

悲しいのは、一部の企業主導型で悪徳行為や限りなく黒に近いグレー行為が既にあったようで【補助金ビジネス】と言われるような報道があったことだ。

企業主導型保育事業では補助金が潤沢に払われるかのような心証を持つ人もいるようだが、まっとうに規定に基づいて運営し、まっとうに保育内容を充実させ、まっとうに労働環境を維持する場合においては、とてもじゃないが補助金で儲かるような制度にはなっていないことは声を大にして申し添えておきたい。

 

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