ホワイトな保育園が出来るまで

ブラックだ、過酷だと言われる保育業界。ホワイトな保育園は実現不可能なのか?会計や労務を踏まえ、現場の裏話も交えつつ記載していきます。

子どもの健康にまつわる、親の仕事の苦悩をなくしたい

今日は番外編。幼少期の子供を育てながら働く親世代が、子の看護休暇をもっと気楽に使えたり、もっと気楽に早退出来たりする社会になるといいなという思いを記載する。

 

ちょうど今の時期は、インフルエンザや胃腸炎などの流行に、軽い風邪なども頻繁に発症する。当園はまだ大丈夫だが、近隣の小学校や幼稚園で学級閉鎖の声がチラホラ続いているので、気を付けていきたい。

 

さて、保育園には検温して37.5℃以上の時はお休み(お迎え)という基準がある。

国や市の監査でもチェックの入る項目だ。37.5℃の医学的根拠や意見は様々あろうが、【元気に見えた】【いつも通りだった】児が発熱して1時間内に死亡(重症)という例もあり、万が一の場合に備えるためにも、基本的には基準通りに運営している。

本当にどうしようもない急変なら、親元でも園でも結果は同じなのでは?と疑問に思う方もいるだろう。

当然に1人1人の園児の安全管理、健康管理には最大限の努力をするが、保育園(幼稚園、学校など)は1人の大人が常に複数の子ども達を見ていなくてはいけない状況なのも現実である。

となると、親が側で自分の子を見ている状態と比較すると、どうしても【異変に気付く】タイミングが数分であれ、遅くなるリスクはあるのだ。(兄弟の多い家庭はどうなのというのはちょっと置いておく。)

また、緊急時には保育園が病院へ搬送するということも当然に行うが、当該児への対応はもちろん最優先でありつつも、残りの児の安全管理や健康管理の責任だって同時に果たさなくてはならない。いくらある子どもが緊急搬送をしなくてはいけない状況だからといって、残された子どもに手が行き届かずに怪我をした、なんてことはあってはならないからだ。

となると、全ての子供にとって、最大限にリスク対策を行うという観点では、病気の傾向に対しては早期の段階で保護者の元で経過観察がなされることが、その子ども自身にとっても、他児にとっても、望ましいということになる。

病気に限らず、常にこういった部分最適(特定の子供にとっての最善)と全体最適(全ての子供にとっての最善)の狭間で悩みながら、その両方で最善の保育が出来るようにという苦悩が集団を預かる側にはある。

 

もちろん、保護者側にも保護者側の苦悩があるだろう。

会社や顧客など周囲に迷惑をかけているという思いや、自身の仕事が終わらなくなるというプレッシャーなどの心理的な苦悩。賃金の問題や、査定に響くという現実的な苦悩もある。

 

子どもはちょっとしたことで熱も高くなりやすく、すぐに下がるケースも少なくない。

家ではそう頻繁に熱を測らないだけで、37.5℃くらいなら普段からあるかもしれないし、それでも元気に過ごせている。

元気だし、いつも通りだし、食欲もあるし、大丈夫そうだけど。

 こんな様々な思いを抱くのは、私自身もまた、その立場だったから、よくわかる。【仕事】の方に気持ちが揺れると、「このくらい大丈夫だろうに」と思ってしまう。

その反面、【子どもに寄り添いたい】方に気持ちが揺れると「このくらいなんて思ってしまう自分は親失格なのかもしれない」と自らを責める気持ちもになる。

 

 ちょうど昨日、非常勤で兼任している会計事務所側からこんな相談を受けた。

前日に下の子の腹痛で早退した職員から「下の子の腹痛は快方に向かっているが、上の子のクラスがインフルエンザで学級閉鎖になった。下の子は恐らく明日には登園出来るし、上の子も元気で短時間なら留守番をすると言っているので、時間短縮で出勤をします。」と連絡が来た。休みでいいですよ、と返しても本人は出勤すると言うが、どう思うか?

どう思うもなにも、休みだろう。それは感情だけの判断じゃなく、理由がある。

まず、下の子。腹痛が現時点で快方に向かっているように見えても、またぶり返す可能性は捨てきれない。

次に、上の子。下の子の腹痛の原因が胃腸炎やお腹の風邪の可能性も考えられ、その場合は家族間で感染をしているリスクがある。所属するクラスがインフルエンザで学級閉鎖になっている状況も考慮すると、上の子は【今は元気】でも、胃腸炎やお腹の風邪、或いはインフルエンザの【潜伏期間】の可能性は、通常よりも高いと推定される。

明日の勤務中に、それらが発症したらどうだろうか?下の子の園から呼び出しがかかって、迎えに行っているところに上の子が泣きながら電話をしてきたら?

これらの疾病では、すぐさま死や重症に直結しないとしても、大人だって病気の時はしんどいし、心細いだろう。熱が上がっている途中の寒気の状態などは特に不安感に襲われやすく、心理的にも相当に辛い。そんな子供の連絡を受けながら「一緒にいてあげればよかった」と親もまた自分を責めて心理負担が増える可能性もあろう。(経験上、こういう葛藤や後悔の気持ちが頻発すると、仕事をすべきでないのかもしれない、となりやすい。)

それだけでなく、その職員自身が【潜伏期間】の可能性も捨てきれない以上、出勤することで他の職員に感染を広めるリスクだってある。

ひとまずは、上の子の潜伏期間(留守番中の発症リスク)の説明を添えながら、再度休んだ方がいいと思うと伝えることに。

案の定、下の子はまだお腹のゴロゴロ感があり、念のために幼稚園も休む方がもよさそうとのこと。そして最後には「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と。

これ、本当に謝る必要はないと思っている。だって誰も悪くないではないか。

当園でも子どもの病気で欠勤した時に、次の出勤で菓子折りを持ってきた保育士もいて驚いたが、そういうのは本当に無しにしていかないと、お互いにしんどくなる。

我々は子どもがいたらこんなことが起きることは大前提で雇用をしている。特に会計事務所側は、それによって他のスタッフにしわ寄せが発生しないような構造になっているし、万が一しわよせが少しはあったとしても、また別の場面では自分が代打になることもあり得て、お互い様なのだ。

仮にどうしても心理的に申し訳なく思うなら、いつか、誰かのそんな場面を、心から「大丈夫、ゆっくり休んで!」の気持ちで迎えてくれればいい。

 

なにより、法的にも、従業員には子の看護休暇を取得する権利がある。

子の看護休暇に際し、お給料が出るかどうかは企業の自由だ(基本は出ない)が、休む権利自体は補償されており、それはワガママで休むことやサボリとは異なり、査定にも響かない。

とはいえ、どれだけ法的に権利があると主張したり、上司や会社側は「休んで大丈夫」としていても、実際に周囲の職員から「迷惑」「残業が増える」などの不満が出たり、顧客や取引先からクレームがつくなど、単に制度だけでは難しい問題もあるだろう。

自分達が子育て中にはそんな支えや制度が使えなかった人は、同じ苦労をさせなくていいんだ、よかった、と。

これから子育て期を迎えるかもしれない人は、自分もいつかお世話になるかもしれない、と。

自分は子育てに縁がないだろうな、と言う人だって、子ども以外でも大切な人のいざという時にお互い様になるかもしれない、と。

そんな風に、全体の理解が進んで、子どもの病気(の可能性)に対して、「このくらいなら仕事を優先しなくては」と親が負担に思わなくていいように、社会全体が子育て世帯の働きやすさを支えられたら。

そして、そうやって支えてもらった人たちが、数年して子どもが大きくなった時に「自分もあの時に周りに助けてもらった」と、次の誰かを支えられる、そんな循環のある社会になることを願ってやまない。

 

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