ホワイトな保育園が出来るまで

ブラックだ、過酷だと言われる保育業界。ホワイトな保育園は実現不可能なのか?会計や労務を踏まえ、現場の裏話も交えつつ記載していきます。

賃金保障ありの早帰りという選択肢

これまで、当園の2大特徴である【週休3日制・残業や持ち帰り仕事無し】について記載してきた。

sakura-mirai.hatenablog.com 

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その上で、もう1つ大切にしていることがある。それが【園児が降園次第、早帰り可能(賃金カット無し)】という点だ。

 18時30分が定時でも、日によっては17時40分などかなり早い段階で全ての園児のお迎えが終わることがある。

その場合は、締め作業が終わり次第、帰ってよいこととし、定時まで働いていない分の賃金もカットはしない(自己都合の早退=不就労ではないので。)

もちろん、私自身には書類やら大量の業務があるわけで、定時までは就労時間なのだから、と色々と手伝ってもらうというのも1つの選択肢だろう。しかし、以下の4点の理由から、保育が終了次第帰ることがよいと判断している。

 

1.保育士には徹底的に保育に専念してもらう

保育以外の業務は、本来(=その時間に園児が居た場合)は手伝ってもらうことが出来ないはずである。

保育があったらやれないはずの業務を、偶然時間が空いている時に頻繁に任せていくと、その業務を保育士が行うことが当然というように意識がシフトし(やる側も自分の職務責任と感じてしまい)がちである。

その結果として、保育が早くに終わらない日に「やれなくてすみません」「残ってやっていきます」「持ち帰ります」となってしまう可能性や、例えそうしなくていいと言っても「申し訳ない」という気持ちが発生しかねない。

責任感の強い人が多い職場こそ、いつもやること(各人の持ち分)はなるべくわかりやすく見える化(固定化)し、自分の行うべき業務が終わったら帰れる、という習慣化は重要だと考えている。

お昼寝の見守りの時間に手が空く場合は、保育の本で勉強をするという選択肢もあるが、これはあくまでも何もせずボーっと昼寝の見守りをするより、何かしていたいという場合のみである。退勤時間まで40分は勉強しましょう、と強制したところで、疲れている時間帯に「早く帰りたいなぁ」と思いながら形だけ本を捲っても効果はないので、定時までの時間に勉強をとは考えていない。(したい人がするのは自由)

 

2.結果として非効率になる

業務内容を職種に応じて明確に分担している体制下において、ある日だけ突発的に担当外の業務を担うというのは、手順のほかに経緯などの共有でも非効率であり、ミスの発生率も高くなるといえる。

例えば、普段は殆ど家事に関与しない家族が、ある日急に料理の最中に「少し手伝うよ」と台所に入ってきたとしよう。

何を手伝ってもらうかを考えるのも、そのやり方を教え、見守って適宜指示をしなくてはいけないのも、その傍らで自分も別作業を同時進行しなくてはいけないのも、なかなか負担だ。

自分だけでやっている時には起こりえないミスが起きたり、必要以上に時間がかかったりということもあるだろう。それでも、相手へ配慮すると寛大な気持ちで対応をしようとするだろうし、『今回だけかもしれない』と思えば、ミスのフィードバックも細かくはしないだろう。下手をすれば、ちょっとした注意に相手が「せっかく手伝おうと思ったのに」と不満を抱きかねず、人的配慮にも負担が増えるだろう。

どれだけ相手が料理が得意だったとしても、その台所や自分流のやり方との相違に、色々と苦労をするケースもある。(義理の母などが我が家に遊びに来て台所に入ってきた感じをイメージするとわかりやすい方も多いのではなかろうか。)

今後も常に、その人にその業務を担ってもらう前提であれば、そういった苦労もありつつ、しっかりと仕事を教え、ミスをフィードバックし、改善につなげていく必要性もあるが、次があるのかどうかもわからない、いつになるかもわからない、という状況では、手伝ってもらうことがあまり効率的とは言えないことも多いのだ。

 

3.休息も大事

体調管理も仕事のうち、というように、その日の仕事時間だけを考えるのではなく、中長期での仕事への影響も考慮要素の1つだ。

もともと1日10時間と長い所定労働時間であることからも、1日の疲労蓄積度合いは大きい傾向にあり、少しでも早く仕事から離脱して心身を休ませることは、非常に望ましい状況にある。

加えて、殆どの職員が子育て世帯であるため、帰宅後も家事育児に追われる状況をふまえると、少しでも早く帰宅できることは夜の時間の使い方に大きく影響もする。

10分でも早く帰れれば、帰り道に大急ぎで買い物を済ませるところを、少しだけゆっくりした気持ちでスーパーを回れるだろう。

子育て中はどうしても「早くして」と言ってしまいがちだが、今日は早く帰れたから少し子どもとお風呂でゆっくり遊ぼうかな、という余裕として使うことも出来るかもしれない。

或は、早く帰れた分で色々早めに終わらせて子どもはパパに任せて、溜まってた録画を楽しむぞ!と自分の時間を楽しむ余裕に充てることも出来るだろう。

家庭と仕事の両立は本当に大変であり、なるべく効率化してルーティーンにして頑張っている人が多いと思うが、効率化してルーティーンになればなるほど、ふとした瞬間に虚しさを覚えることもある。たまの早帰りが、そういった虚しさを少しでも軽減できると、仕事にもまた前向きに取り組め、よりよい保育に結びつくと考えている。

ちなみに、子育て世帯でない場合でも、余暇の時間が増えることはいいことだと考えている。仕事のことを頑張りたい!と思う気持ちは、その時間に自主学習をすればいいと思っているので、仕事をするのが悪いということではない。

 

4.ダラダラしない環境になる

『やることが終わっても定時までは職場にいるように』『やることが終わっているなら、追加の仕事を渡すから定時までは職場にいるように』という環境と比較すると、『やることが終わっているなら早く帰れて、かつ給料は同一』の方が、常に効率的に仕事をしようという意識を持ちやすいと考えている。

当然に保育がメインの受け持ち業務で最優先という前提は崩さない上で、どう行動しておくと、終わりの時点でより効率的かを考えながら日中も動いている様子があるし、降園後も非常にテキパキ締め作業をして、皆あっという間に帰っていく。

スタッフ同士で喋ることや、和気あいあいということ自体を否定はしないが、仲良くなりたいという心理ならばそれは退勤後か休みの日に自由にすればよい。お喋りは確実に仕事の速度も質も落とすからだ。良い仕事をするために意見交換をするのだ、というのであれば、それは意識的に行ってお喋りとは区分しないと、ただの雑談会で終わる。

特に家庭と仕事の両立という面で、少しでも早く帰りたいという人にとっては、やるべき仕事をさっさと終わらせて帰る!という選択を堂々と行える環境が必要だと思っている。周囲に合わせなきゃ、合わせなきゃと気を遣うばかりに、内心もっと効率よくやりたいとが実現できないのはお互いに望ましくないだろう。

 

余談だが、15分単位などの勤務時間切り捨てルールを設けている職場で特によくあるのが「早く帰ると損だから」というダラダラスタイルだ。17時14分退勤は17時として扱われるので、もう少し待って15分になったら帰ろう、などという従業員が発生する。これがどんどん意識の低下を招き、ダラダラと働く環境につながる。

そもそもとして労基法を考えても、15分単位などという扱い自体が違法(1分単位で賃金発生)なのだが、1分単位にしても解決しない面もある。

時給の人は特に、働く時間に比例してお給料が出るため、効率化と言われて頑張って早く終わって早く帰ると、自身の賃金が減って困る可能性が出てしまう。月給者で残業が常態化している職場も、残業代で稼ぐためにダラダラとする人が発生しやすい。

当園では早帰り時の賃金カットをしないのは当然ながら、調理員のようにどうしても就業時間にある程度のばらつきが生じる職員も、早く終わって帰る日が多いことが損にならないよう調整(昇給や手当加算、賞与など)をしている。生活のために働くという側面もある以上、最低限の賃金保障もまた、雇用者の責任だと考えているためだ。

 

業種によっては何もせずとも、終了時間まで待機をする人が必要な職場もあるだろう。ただ、当園でのメインは【保育】であり、飛込の保育は発生しない以上、その日の保育が終わり次第帰っても問題はない。

或は、各人が今の受け持ちを早く終えられるようになり、それぞれに担える業務が増える方が本人にとってもスキルアップでいいことだし、その方が会社全体が出来ることが増えて企業成長につながる、という考えも賛成だ。だが、これは昇給や賞与などで職員にしっかりと還元していくことも同時に必要である上に、各人の環境がそれを最大限に実現可能な状態にあることがワンセットである。

当園では、制度上どうしても保育士の賃金などには限界が見えているほか、子育て世帯を人材のターゲットにしている以上、無理がきかない状況なことが大前提であるため、今はまだ皆でどんどん新しいことを出来るようにして企業成長しよう!という段階にないと考えている。

 

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