ホワイトな保育園が出来るまで

ブラックだ、過酷だと言われる保育業界。ホワイトな保育園は実現不可能なのか?会計や労務を踏まえ、現場の裏話も交えつつ記載していきます。

保育園勤務で副業をOKにする4つの理由

保育園のお金の話と、労務の話の双方に関係があるのが【当園では副業を明示的にOKとしている】点だ。これは保育士に限らず、調理員も事務庶務も全員である。

当然に、雇用契約上の所定労働時間や所定労働日数はきちんと守ってもらう(その勤務に影響のないように、副業を含めたプライベートの管理をしてもらう)ことは前提であるが、副業をすること自体への制約はなく、それこそ、同業他社(別の保育園)で勤務をするのも規制していない。

 

1.技能(知識)の向上

保育も、調理も、事務庶務も、業務量をこなすほどに技能(知識)が向上する可能性がある。また、当園以外のスタイルに触れることで、より新たなアイディアや取り組みを行える可能性もあるため、他社で勤務をしたり、自営業(個人活動)をしたりすることにもメリットがあると考えている。

 

2.禁止する理由がない

副業を禁止するケースで多い理由としては、情報漏えい、ライバル社に負ける可能性、引き抜き(人材の確保)などの面があるだろう。

・情報漏えい:当園のやり方が他社に知られることは困ることか?困らない。いいと感じることは同業でも異業種でも、どんどん取り入れていってほしい。個人情報に関することは、副業をするしないに関わらず他言禁止の守秘義務があるため、その漏えい防止などという理由も成り立たない。

・ライバル社に負ける可能性:立場上【認可園がいい】【認可外は危ない】などの見られ方もするし、他園に対してライバルという感覚もない。それぞれの園に特徴があり、当園は当園が目指す【子どもに寄り添った保育】をするにあたり「〇〇に負けないように!」という軸も持ってない。待機児童問題が解消し、どこの園も定員割れをする時代が来て、当園が選ばれなくなるのであれば、それはそれでいいと思っている。誤解のないように、これは保育に対しての熱意が足りないとかでは決してなく、そもそも国の制度を活用している以上、いつ何時『待機児童問題が解消したので、企業主導型の予算を下げます(なくします)』と言われるかわからない、そうなったらそうなっただ。というような覚悟は持った上で開園をしているという話だ。

・引き抜き(人材の確保):職員が当園よりも他の方がいいなぁと思う可能性に関しては、副業をしても、しなくても、起こりえること。副業を禁止したところで意味がなく、他に行かせないような対策に力を入れるよりは、当園に居続けたくなるような努力をしたい。園の方針や価値観とマッチする人材が、より能力を発揮できる環境を作って行ければと思う。

 

3.【仕事】の線引きの曖昧化

副業が【本業以外の仕事】を指すとして、ではどこまでが個人の趣味の延長で、どこからが仕事か?という線引きは次第に難しい時代になっていると感じている。

少し前までは、休日に公園のフリマでハンドメイドを売るのは個人の趣味の延長だったかもしれない。では個人もネット販売がしやすくなった今、ネットでハンドメイド雑貨を売るのはどうなのか?

かつては、友人のお店をちょっと手伝うのは個人の生活の延長(交友関係の一部)だったかもしれない。では今、ネットで知り合った人にイラストや楽曲の提供をして対価を得る場合はどうなのか?

ゲームで遊ぶのは個人の趣味、YouTubeで何かを発信するのも個人の趣味、ではその趣味が掛け合わさり、話題を呼ぶ場合は?

ポイントサイトのお小遣い稼ぎ、ブログのアフィリエイトクラウドファンディング、など活動の範囲も内容も多種多様だ。

収入を1円でも得たら仕事?定期的な収入になっていれば仕事?利益が出ていれば仕事?税務署に申告が必要なら仕事?お金じゃないもので対価を得ている場合は?

こう考えると、会社に勤める以外の選択肢を選びやすくなり、自分の能力(労働)を提供して対価を得るという活動を、個人も気軽にいつでもやりやすくなっている時代において、どこからが仕事だという線引きは非常に難しくなっているとも感じている。

あらゆる活動を網羅的に検証して可否を決めることは出来ないと思っており、当園と労働者との間における雇用契約に違反が無い限りは、その他の経済活動の全てを個人の自由として認める方が、合理的ではないだろうか。

 

4.生活の保障が出来ないという現実

以前記載したとおり、保育園の財政状況は非常に苦しい。

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そこを脱する努力をするつもりがどれだけ私にあっても、現実的な面では【昇給や賞与で職員に還元できる限界】はとっくに見えており、それで十分な生活の保障が出来るかと問われると、答えはNOだ。

 あげく、残業をしない環境を徹底するのだから、従業員としても残業代で稼ぐなども出来ない。

保育士のみならず、調理員にしても、補助員にしても、制度上の制約もあり、シフトに入れてあげられる限界もある。

こういった状況下において、休みの日に他の園でバイトしようとか、隙間時間に何かを自分で作ってネットで販売しようとか、職員が自ら収入源を増やすことを、どうして禁止できようか。

子どもが好き、社会の役に立ちたい、そんな想いで職員が頑張ってくれていることも事実だが、同時に、それぞれにも生活や叶えたいこと、やりたいことがあり、お金がないと実現出来ないことが多いのも現実だ。

 

ということで、当園は開園時から就業規則でも明示的に副業を認めている。

子育て中の職員ばかりなので、実際に今、副業をガッツリしている者はいないと思うが、今後、職員の人生における選択肢の幅が広がることになれば嬉しい。

ちなみに、私はバリバリに副業をしている。収入増だけでなく、得られる知識や経験も大きく、それが本業に生きることもあるので、メリットもたくさんある。

一方で、スケジュール調整や優先度で悩むこともある。不可抗力の突発的事象が1つでも起きると、全てに影響もするため、無理をしないといけない場面もあり、やはり心身への負担は本業だけよりも大きい。このあたりは副業先の理解のおかげで色々と成り立っているので、感謝しかない。

  

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賃金保障ありの早帰りという選択肢

これまで、当園の2大特徴である【週休3日制・残業や持ち帰り仕事無し】について記載してきた。

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その上で、もう1つ大切にしていることがある。それが【園児が降園次第、早帰り可能(賃金カット無し)】という点だ。

 18時30分が定時でも、日によっては17時40分などかなり早い段階で全ての園児のお迎えが終わることがある。

その場合は、締め作業が終わり次第、帰ってよいこととし、定時まで働いていない分の賃金もカットはしない(自己都合の早退=不就労ではないので。)

もちろん、私自身には書類やら大量の業務があるわけで、定時までは就労時間なのだから、と色々と手伝ってもらうというのも1つの選択肢だろう。しかし、以下の4点の理由から、保育が終了次第帰ることがよいと判断している。

 

1.保育士には徹底的に保育に専念してもらう

保育以外の業務は、本来(=その時間に園児が居た場合)は手伝ってもらうことが出来ないはずである。

保育があったらやれないはずの業務を、偶然時間が空いている時に頻繁に任せていくと、その業務を保育士が行うことが当然というように意識がシフトし(やる側も自分の職務責任と感じてしまい)がちである。

その結果として、保育が早くに終わらない日に「やれなくてすみません」「残ってやっていきます」「持ち帰ります」となってしまう可能性や、例えそうしなくていいと言っても「申し訳ない」という気持ちが発生しかねない。

責任感の強い人が多い職場こそ、いつもやること(各人の持ち分)はなるべくわかりやすく見える化(固定化)し、自分の行うべき業務が終わったら帰れる、という習慣化は重要だと考えている。

お昼寝の見守りの時間に手が空く場合は、保育の本で勉強をするという選択肢もあるが、これはあくまでも何もせずボーっと昼寝の見守りをするより、何かしていたいという場合のみである。退勤時間まで40分は勉強しましょう、と強制したところで、疲れている時間帯に「早く帰りたいなぁ」と思いながら形だけ本を捲っても効果はないので、定時までの時間に勉強をとは考えていない。(したい人がするのは自由)

 

2.結果として非効率になる

業務内容を職種に応じて明確に分担している体制下において、ある日だけ突発的に担当外の業務を担うというのは、手順のほかに経緯などの共有でも非効率であり、ミスの発生率も高くなるといえる。

例えば、普段は殆ど家事に関与しない家族が、ある日急に料理の最中に「少し手伝うよ」と台所に入ってきたとしよう。

何を手伝ってもらうかを考えるのも、そのやり方を教え、見守って適宜指示をしなくてはいけないのも、その傍らで自分も別作業を同時進行しなくてはいけないのも、なかなか負担だ。

自分だけでやっている時には起こりえないミスが起きたり、必要以上に時間がかかったりということもあるだろう。それでも、相手へ配慮すると寛大な気持ちで対応をしようとするだろうし、『今回だけかもしれない』と思えば、ミスのフィードバックも細かくはしないだろう。下手をすれば、ちょっとした注意に相手が「せっかく手伝おうと思ったのに」と不満を抱きかねず、人的配慮にも負担が増えるだろう。

どれだけ相手が料理が得意だったとしても、その台所や自分流のやり方との相違に、色々と苦労をするケースもある。(義理の母などが我が家に遊びに来て台所に入ってきた感じをイメージするとわかりやすい方も多いのではなかろうか。)

今後も常に、その人にその業務を担ってもらう前提であれば、そういった苦労もありつつ、しっかりと仕事を教え、ミスをフィードバックし、改善につなげていく必要性もあるが、次があるのかどうかもわからない、いつになるかもわからない、という状況では、手伝ってもらうことがあまり効率的とは言えないことも多いのだ。

 

3.休息も大事

体調管理も仕事のうち、というように、その日の仕事時間だけを考えるのではなく、中長期での仕事への影響も考慮要素の1つだ。

もともと1日10時間と長い所定労働時間であることからも、1日の疲労蓄積度合いは大きい傾向にあり、少しでも早く仕事から離脱して心身を休ませることは、非常に望ましい状況にある。

加えて、殆どの職員が子育て世帯であるため、帰宅後も家事育児に追われる状況をふまえると、少しでも早く帰宅できることは夜の時間の使い方に大きく影響もする。

10分でも早く帰れれば、帰り道に大急ぎで買い物を済ませるところを、少しだけゆっくりした気持ちでスーパーを回れるだろう。

子育て中はどうしても「早くして」と言ってしまいがちだが、今日は早く帰れたから少し子どもとお風呂でゆっくり遊ぼうかな、という余裕として使うことも出来るかもしれない。

或は、早く帰れた分で色々早めに終わらせて子どもはパパに任せて、溜まってた録画を楽しむぞ!と自分の時間を楽しむ余裕に充てることも出来るだろう。

家庭と仕事の両立は本当に大変であり、なるべく効率化してルーティーンにして頑張っている人が多いと思うが、効率化してルーティーンになればなるほど、ふとした瞬間に虚しさを覚えることもある。たまの早帰りが、そういった虚しさを少しでも軽減できると、仕事にもまた前向きに取り組め、よりよい保育に結びつくと考えている。

ちなみに、子育て世帯でない場合でも、余暇の時間が増えることはいいことだと考えている。仕事のことを頑張りたい!と思う気持ちは、その時間に自主学習をすればいいと思っているので、仕事をするのが悪いということではない。

 

4.ダラダラしない環境になる

『やることが終わっても定時までは職場にいるように』『やることが終わっているなら、追加の仕事を渡すから定時までは職場にいるように』という環境と比較すると、『やることが終わっているなら早く帰れて、かつ給料は同一』の方が、常に効率的に仕事をしようという意識を持ちやすいと考えている。

当然に保育がメインの受け持ち業務で最優先という前提は崩さない上で、どう行動しておくと、終わりの時点でより効率的かを考えながら日中も動いている様子があるし、降園後も非常にテキパキ締め作業をして、皆あっという間に帰っていく。

スタッフ同士で喋ることや、和気あいあいということ自体を否定はしないが、仲良くなりたいという心理ならばそれは退勤後か休みの日に自由にすればよい。お喋りは確実に仕事の速度も質も落とすからだ。良い仕事をするために意見交換をするのだ、というのであれば、それは意識的に行ってお喋りとは区分しないと、ただの雑談会で終わる。

特に家庭と仕事の両立という面で、少しでも早く帰りたいという人にとっては、やるべき仕事をさっさと終わらせて帰る!という選択を堂々と行える環境が必要だと思っている。周囲に合わせなきゃ、合わせなきゃと気を遣うばかりに、内心もっと効率よくやりたいとが実現できないのはお互いに望ましくないだろう。

 

余談だが、15分単位などの勤務時間切り捨てルールを設けている職場で特によくあるのが「早く帰ると損だから」というダラダラスタイルだ。17時14分退勤は17時として扱われるので、もう少し待って15分になったら帰ろう、などという従業員が発生する。これがどんどん意識の低下を招き、ダラダラと働く環境につながる。

そもそもとして労基法を考えても、15分単位などという扱い自体が違法(1分単位で賃金発生)なのだが、1分単位にしても解決しない面もある。

時給の人は特に、働く時間に比例してお給料が出るため、効率化と言われて頑張って早く終わって早く帰ると、自身の賃金が減って困る可能性が出てしまう。月給者で残業が常態化している職場も、残業代で稼ぐためにダラダラとする人が発生しやすい。

当園では早帰り時の賃金カットをしないのは当然ながら、調理員のようにどうしても就業時間にある程度のばらつきが生じる職員も、早く終わって帰る日が多いことが損にならないよう調整(昇給や手当加算、賞与など)をしている。生活のために働くという側面もある以上、最低限の賃金保障もまた、雇用者の責任だと考えているためだ。

 

業種によっては何もせずとも、終了時間まで待機をする人が必要な職場もあるだろう。ただ、当園でのメインは【保育】であり、飛込の保育は発生しない以上、その日の保育が終わり次第帰っても問題はない。

或は、各人が今の受け持ちを早く終えられるようになり、それぞれに担える業務が増える方が本人にとってもスキルアップでいいことだし、その方が会社全体が出来ることが増えて企業成長につながる、という考えも賛成だ。だが、これは昇給や賞与などで職員にしっかりと還元していくことも同時に必要である上に、各人の環境がそれを最大限に実現可能な状態にあることがワンセットである。

当園では、制度上どうしても保育士の賃金などには限界が見えているほか、子育て世帯を人材のターゲットにしている以上、無理がきかない状況なことが大前提であるため、今はまだ皆でどんどん新しいことを出来るようにして企業成長しよう!という段階にないと考えている。

 

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子どもの健康にまつわる、親の仕事の苦悩をなくしたい

今日は番外編。幼少期の子供を育てながら働く親世代が、子の看護休暇をもっと気楽に使えたり、もっと気楽に早退出来たりする社会になるといいなという思いを記載する。

 

ちょうど今の時期は、インフルエンザや胃腸炎などの流行に、軽い風邪なども頻繁に発症する。当園はまだ大丈夫だが、近隣の小学校や幼稚園で学級閉鎖の声がチラホラ続いているので、気を付けていきたい。

 

さて、保育園には検温して37.5℃以上の時はお休み(お迎え)という基準がある。

国や市の監査でもチェックの入る項目だ。37.5℃の医学的根拠や意見は様々あろうが、【元気に見えた】【いつも通りだった】児が発熱して1時間内に死亡(重症)という例もあり、万が一の場合に備えるためにも、基本的には基準通りに運営している。

本当にどうしようもない急変なら、親元でも園でも結果は同じなのでは?と疑問に思う方もいるだろう。

当然に1人1人の園児の安全管理、健康管理には最大限の努力をするが、保育園(幼稚園、学校など)は1人の大人が常に複数の子ども達を見ていなくてはいけない状況なのも現実である。

となると、親が側で自分の子を見ている状態と比較すると、どうしても【異変に気付く】タイミングが数分であれ、遅くなるリスクはあるのだ。(兄弟の多い家庭はどうなのというのはちょっと置いておく。)

また、緊急時には保育園が病院へ搬送するということも当然に行うが、当該児への対応はもちろん最優先でありつつも、残りの児の安全管理や健康管理の責任だって同時に果たさなくてはならない。いくらある子どもが緊急搬送をしなくてはいけない状況だからといって、残された子どもに手が行き届かずに怪我をした、なんてことはあってはならないからだ。

となると、全ての子供にとって、最大限にリスク対策を行うという観点では、病気の傾向に対しては早期の段階で保護者の元で経過観察がなされることが、その子ども自身にとっても、他児にとっても、望ましいということになる。

病気に限らず、常にこういった部分最適(特定の子供にとっての最善)と全体最適(全ての子供にとっての最善)の狭間で悩みながら、その両方で最善の保育が出来るようにという苦悩が集団を預かる側にはある。

 

もちろん、保護者側にも保護者側の苦悩があるだろう。

会社や顧客など周囲に迷惑をかけているという思いや、自身の仕事が終わらなくなるというプレッシャーなどの心理的な苦悩。賃金の問題や、査定に響くという現実的な苦悩もある。

 

子どもはちょっとしたことで熱も高くなりやすく、すぐに下がるケースも少なくない。

家ではそう頻繁に熱を測らないだけで、37.5℃くらいなら普段からあるかもしれないし、それでも元気に過ごせている。

元気だし、いつも通りだし、食欲もあるし、大丈夫そうだけど。

 こんな様々な思いを抱くのは、私自身もまた、その立場だったから、よくわかる。【仕事】の方に気持ちが揺れると、「このくらい大丈夫だろうに」と思ってしまう。

その反面、【子どもに寄り添いたい】方に気持ちが揺れると「このくらいなんて思ってしまう自分は親失格なのかもしれない」と自らを責める気持ちもになる。

 

 ちょうど昨日、非常勤で兼任している会計事務所側からこんな相談を受けた。

前日に下の子の腹痛で早退した職員から「下の子の腹痛は快方に向かっているが、上の子のクラスがインフルエンザで学級閉鎖になった。下の子は恐らく明日には登園出来るし、上の子も元気で短時間なら留守番をすると言っているので、時間短縮で出勤をします。」と連絡が来た。休みでいいですよ、と返しても本人は出勤すると言うが、どう思うか?

どう思うもなにも、休みだろう。それは感情だけの判断じゃなく、理由がある。

まず、下の子。腹痛が現時点で快方に向かっているように見えても、またぶり返す可能性は捨てきれない。

次に、上の子。下の子の腹痛の原因が胃腸炎やお腹の風邪の可能性も考えられ、その場合は家族間で感染をしているリスクがある。所属するクラスがインフルエンザで学級閉鎖になっている状況も考慮すると、上の子は【今は元気】でも、胃腸炎やお腹の風邪、或いはインフルエンザの【潜伏期間】の可能性は、通常よりも高いと推定される。

明日の勤務中に、それらが発症したらどうだろうか?下の子の園から呼び出しがかかって、迎えに行っているところに上の子が泣きながら電話をしてきたら?

これらの疾病では、すぐさま死や重症に直結しないとしても、大人だって病気の時はしんどいし、心細いだろう。熱が上がっている途中の寒気の状態などは特に不安感に襲われやすく、心理的にも相当に辛い。そんな子供の連絡を受けながら「一緒にいてあげればよかった」と親もまた自分を責めて心理負担が増える可能性もあろう。(経験上、こういう葛藤や後悔の気持ちが頻発すると、仕事をすべきでないのかもしれない、となりやすい。)

それだけでなく、その職員自身が【潜伏期間】の可能性も捨てきれない以上、出勤することで他の職員に感染を広めるリスクだってある。

ひとまずは、上の子の潜伏期間(留守番中の発症リスク)の説明を添えながら、再度休んだ方がいいと思うと伝えることに。

案の定、下の子はまだお腹のゴロゴロ感があり、念のために幼稚園も休む方がもよさそうとのこと。そして最後には「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と。

これ、本当に謝る必要はないと思っている。だって誰も悪くないではないか。

当園でも子どもの病気で欠勤した時に、次の出勤で菓子折りを持ってきた保育士もいて驚いたが、そういうのは本当に無しにしていかないと、お互いにしんどくなる。

我々は子どもがいたらこんなことが起きることは大前提で雇用をしている。特に会計事務所側は、それによって他のスタッフにしわ寄せが発生しないような構造になっているし、万が一しわよせが少しはあったとしても、また別の場面では自分が代打になることもあり得て、お互い様なのだ。

仮にどうしても心理的に申し訳なく思うなら、いつか、誰かのそんな場面を、心から「大丈夫、ゆっくり休んで!」の気持ちで迎えてくれればいい。

 

なにより、法的にも、従業員には子の看護休暇を取得する権利がある。

子の看護休暇に際し、お給料が出るかどうかは企業の自由だ(基本は出ない)が、休む権利自体は補償されており、それはワガママで休むことやサボリとは異なり、査定にも響かない。

とはいえ、どれだけ法的に権利があると主張したり、上司や会社側は「休んで大丈夫」としていても、実際に周囲の職員から「迷惑」「残業が増える」などの不満が出たり、顧客や取引先からクレームがつくなど、単に制度だけでは難しい問題もあるだろう。

自分達が子育て中にはそんな支えや制度が使えなかった人は、同じ苦労をさせなくていいんだ、よかった、と。

これから子育て期を迎えるかもしれない人は、自分もいつかお世話になるかもしれない、と。

自分は子育てに縁がないだろうな、と言う人だって、子ども以外でも大切な人のいざという時にお互い様になるかもしれない、と。

そんな風に、全体の理解が進んで、子どもの病気(の可能性)に対して、「このくらいなら仕事を優先しなくては」と親が負担に思わなくていいように、社会全体が子育て世帯の働きやすさを支えられたら。

そして、そうやって支えてもらった人たちが、数年して子どもが大きくなった時に「自分もあの時に周りに助けてもらった」と、次の誰かを支えられる、そんな循環のある社会になることを願ってやまない。

 

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残業や持ち帰り仕事は絶対にしない、と先に決めないと実現出来ない

前回は、当園の特徴である【正社員(保育士)が週休3日制】について記載した。

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今回は、もう一つの特徴の残業・持ち帰り仕事無しについて記載していく。

そもそもとして残業無し・持ち帰り仕事無しを徹底しようとした理由は、前職にある。現在も非常勤職員として在籍させてもらっている会計事務所は、今でこそ当園に負けず劣らず(待遇では圧勝の)超ホワイトな事務所だが、5年前は激烈ブラック事務所だったのだ。(公表する許可は得ている 笑)

職場で残業が常態化していくと、次第に必要な残業とそうでない残業の区分がなされなくなる。職員の意識も低下し、【どうせ残業だしなーちょっとリフレッシュしようかなー】と謎のコーヒータイム(ただの休憩)が頻繁に発生したり、職員間コミュニケーションを口実にダラダラ話し続けていたり、非効率な作業の仕方に気付かない(見直しがなされい)などと、悪循環が発生していた。

事業者側も【本人達が頑張っても終わらないと言うんだし、採用も時代的に難航しているし、うちみたいな弱小は仕方ないか】となりがちで、当然にそんな組織の求人に魅力があるわけもなく、更なる悪循環に陥っていた。

ちょこちょこと軌道修正が出来るレベルではなくなっていたため、荒療治としてまずは【全員、いかなる理由があっても残業を禁止】とした。これによって【職員数×定時勤務では終わらない業務量】が完全に見える化され、勤務時間内の効率化も含めて全体の抜本改革を行った。

溢れる仕事は代表と私で、締切の迫ったものから文字通り【死ぬ気で】取り組んで終わらせていき、以来4年間全職員のノー残業(むしろ昇給もしながら定時の短縮が進んでいる)という実績を残しているのだが、この話は本題から反れるので割愛する。

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こういった経験をもとに、保育園を作る際に絶対のルールとしたことが【残業・持ち帰りを発生させないこと】である。みなし残業が含まれているとか、自主練習や自主研修などの名のもとに誤魔化しているとか、そういった裏技?も一切使っていない。

以下のように完全にルール化し、その上で【溢れる業務】は私がやる。これを徹底すれば、残業は発生しようがないのである。

溢れる業務を誰かに任せたいのであれば、追加採用をするほかない。法律を守り、適正に賃金を払う前提で採用が出来るかどうか。資金的な面でそれが無理なら、それは経営側の責任でしかないのだから、自らやるのが当然なのだ。

 

1.残業は保護者の遅延時のみと決める

必要な残業(労使の努力ではどうにも回避できない残業)として、保護者がお迎えに来られない時がある。こればかりは、規定で現場に2名の人間が物理的に存在する必要がある以上、私だけではカバー出来ず、職員も1名は絶対に残業となる。

その代り、残業代は延長保育料で賄えるように設定をし、きちんと1分単位で残業代を支給する。・・・といっても、現時点で発生例がないのだが。

発生例がないのは、保護者の皆さんのご理解と努力のおかげで成り立っているので、感謝しかない。ちょっと仕事が長引いてしまった!という時に大急ぎでお迎えに行く心理や、それが続くストレスは自分も経験しているだけに、お迎え時間に遅れないのは当然だとは思わず、皆さんのおかげという感謝は忘れずにいたい。

そして、こうして保育士が残業なく健全に働ける環境の構築には、他の企業の就労環境も影響をしていることを、少しでも多くの方に知っていただきたい。社会全体が【残業無し】になっていくと、子を預けて働く保護者の心身の負担も減り、我々も更に頑張ってよりよい保育を子どもに提供でき、子どもが明るく育つ未来への希望を持てるのだ。

 

2.保育士が保育以外のことをしない

子供達がいる時間帯に保育士がやるべきことの最優先は保育である。

では、子供達がいない時間とは?登園する前・降園した後に残されたわずかな時間。朝は部屋のセッティングをしながらざっと園児の家庭状況や申し送り事項のチェックをし、帰りは引継ぎ事項をざっと報告して締め作業をしたらそれだけで定時である。

ならば、保育士がやるべき業務をそれ以上増やさない。この徹底しかない。

ただでさえ保育中は気を配るべきことが多いため、そもそもとして頭の片隅に【未完の業務】があるのは保育の質にも影響が生じる。【未完の業務】のプレッシャーは、ちょっとの隙に【進めないと】という意識をもたらすため、「今なら集中して絵本を読んでいるから、ちょっと離脱してあの作業を・・・」「よく眠っているし、今ならちょっと別の作業に離れても・・・」と、徐々に【保育】と【その他の業務】の優先度が変わってきてしまうのである。

例えば、壁面飾りや製作活動の準備。【保育士がやる】前提ではなく【やらない】前提で内容を決める。事務庶務スタッフがいればまだいいが、いない場合は私1人でやるわけだから、頻繁に変えない、おおがかりなものはやらない、など【制約の中で取り組む工夫】もうまれる。

他園のケース(保育士がやる場合)で、どれだけ本人としてはなるべく時間をかけずに頑張ろうとしても、「手抜き」「〇〇先生の時はもっとすごかった」と他者から批判を受けてしまい、「ここまでしないといけないのか?」と疑問に思いながらも慣習から抜け出せずにいるケースもあるようだ。

壁面飾りが凝っていて毎月変わっていないと子どもに悪影響なのか?製作活動は豪華絢爛でないと子どもの発達を促せないのか?誰のための行事か?何のためにやるのか?限られた時間内なら、もっと優先すべきことはないのか?常に本質のところで考え、保育の質に問題のないことは、どんどん簡単にして効率化した方がいい。

「なんだか今日は皆して一斉に寝付いて、連絡帳も終わったし、誰もぐずらないし、暇だなぁ・・・」くらいの時には少しだけ保育士に手伝ってもらうこともある。でもこれは、単に【手伝ってもらえてラッキー】なので、【じゃあ次もやってもらおう】というのは禁止。

あんまり頻繁に手伝ってもらうと、意識が易きに流れるので、上記のような状態でもまずは保育士には【保育の知識をアップデートするため】の時間に充ててもらう(主に書籍で勉強)ことを優先している。

 

3.保育士が書類を作らない

書き物が多くって・・・という声をよく聞くのも保育業界の特徴だ。年間指導計画、月案、週日案と、子どもの保育のために規定で定められている書類が多い。当然に、これらを適切に作成して運用することで、子どもに質の良い保育を提供できるのも事実なので、書類をなくせと言っているわけではない。

しかし、劣悪な労働環境では、中身よりもひとまず書類を作ること(形式の仕上がり)が優先され、前年の丸写しで内容を書いた本人もほぼ理解していなかったり、記載の計画が現場実態に見合っていなかったり、作った書類を振り返ることもないままだったり・・・ということも発生しがちで、それでは本末転倒である。【そんな書類は】作る必要がないのだ。

当園では、書類作成自体は全て私が行い、保育士が担うのはその日の連絡帳作成のみだ。これは小規模園で常に全ての状況を私が把握できる環境にしてあることが大きいだろう。

書類作成無しに保育士がいい保育が出来るのか?という点については、【規定の書式をとりあえず埋めた何か】を作る事に時間をかけるのではなく、【何が目的で、どう活用するか】のポイントを抑えて随時フィードバックしていくことで、書類を自分で作らなくても良い保育を行うことは出来るのである。

そもそもとして、書類の主旨は大筋こうだ。

月齢や発達の理論をもとに大枠の計画を立てる(年間指導計画)→実際の子どもの1人1人の発達状態をふまえて、ある程度の見通しを立てる(月案、週日案)→実際に活動をし、遊びや生活を通して状態の観察する(当日の記録)→計画と記録を踏まえた反省や振り返りと、翌日以降の保育案の修正(週日案)→繰り返し

書類作成にあたっては、語彙力や作文力など保育とは別の能力の得意不得意もついてまわり、そこに苦手意識がある(時間のかかる原因がある)保育士も少なくない。そして主任なり上の先生が赤ペン先生のように添削をして、再提出をして、という手間も発生している。そこに時間をかけるくらいなら、作文(文章作成そのもの)は得意な者(私)が担い、現場に入っていても把握しきれない児の情報は各保育士から口頭でヒアリング(書類で提出させるよりも短時間で終わる)→翌日以降の保育で必要な情報はまた口頭で共有して、時短化を図りながら保育に反映する方が、遥かに効率的で成果を上げられるのだ。

自らの希望でスキルアップのために書類作成に挑戦したいという職員もいるが、午睡中に保育士配置が十分である時間のみを書類作成に充てている。

 

4.字を書かない

当園には文字を【書く】文化も無い。園管理は連絡帳を含めて全てITシステムを活用するため、文字は入力するのみだ。

機器もPC、タブレットスマホと各種揃え、各自が最も得意とする機器を用いて入力をする。PCが苦手な職員が時間をかけてPC入力をしたり、タイピングを練習することに時間を割くくらいなら、普段から使い慣れているスマホで入力すればいと考えている。

【綺麗な字で】【間違えないように】手書きをするのは、相当に時間がかかるため、基本的に手書きをするものは園には存在していない。昨年までは一部に手書きが発生していたが、より効率化するために本年1月からシステムも入れ替え、手書きは存在しなくなった。

↓本当に使いやすく、いいシステムでオススメです。費用も高すぎない。

www.codmon.com

 手書きの方が温かみがあるとか、様々な価値観もあろうが、果たしてその温かみは保育士が自らを犠牲にして劣悪な労働環境で疲弊してまで維持すべきことだろうか。

 

5.話は常に園長直通

全ての職員がどんな小さなことでも、速やかに直で私に話をすること、としている。

これは、伝言ゲーム式のミス防止、言った言わないが発生するリスクを無くすため、職員間で話し合ってから私に報告が来ても二度手間になる(企業主導型の制度など様々な規定に照合して判断すべきことが多く、それらの規定の全てを職員が網羅的に常時把握するのは非現実的)などの理由からだ。

また、職員間で相談や調整をする習慣が生まれると、いつしか序列が発生して「〇〇先生の機嫌を取らなきゃ」「〇〇先生の顔色を窺わなきゃ」という環境につながることも懸念している。

「主任に嫌われたら終わり(教材などの許可が下りない、やりたい保育が出来ない)」とか、嫌がらせをされるとか、保育業界に限ったことではないかもしれないが、人間関係によるトラブルが本質のサービス低下を招くのはよくない。

余談だが、開園後にビックリした事件があった。「園長先生にオムツなんて捨てさせて申し訳ありません」と謝りに来た保育士がいたのだ。私も別の児のオムツを変えて捨てに行く時に、その先生もオムツ変えをしていたのを【動線上の合理性】から拾っただけなのに、追いかけてきて謝るのである。

自分がやりたくて開いた園であり、何かあった時に最終的な責任を負うのが私の役目である。そのために園長と名乗ってこそいるものの、現場に入っている時には皆と同じ現場の一員でしかない。足元にオムツがありながら、【園長だからオムツを捨てない】などという非合理な選択肢は私には無いのにも関わらず、序列の世界が身に染みている保育士には謝罪すべき事態だったわけだ。

誰かの機嫌や顔色のために、子どもが後回し、非効率な判断(行動)をするのは全く意味がない。「大人を見ずに子供を見てください。」開園からずっと繰り返し伝え、それぞれにその瞬間の子供にとっての最善かつ効率的な動きが出来るようになってきた。

人間だから、機嫌が悪い日もあろう。生理などでイライラしがちな日もあろう。誰かの言い方にちょっとカチンとしてしまう日もあろう。でも、それは各自が解決すべきことで、他者が機嫌をとってあげるべきことではないのだ。

 

こんな感じで残業無し・持ち帰り無しを実現しているが、結局、私が1人分の人件費で2人分の保育シフトをこなし、加えて夜+日曜にも仕事をしているだけ、というのが現状のカラクリだ。

通常の園では、そこを職員が担うと考えると、【通常の保育園で残業・持ち帰り無しが無理】【予算的にも残業代が出せない】となる理屈も理解は出来る。(だからといって、残業代を払わなくていい理由にはならないが)

とはいえ、無理と決めてかかって残業ありきの環境を続けると、悪循環しか生まないことも、その環境が続けば続くほど断ち切ることが出来なくなることも、嫌というほど経験してきたからこそ、残業・持ち帰りというやり方での解決は絶対にしない

更なる効率化や機械化なり、採用なり、別事業からの投資なり、どんな形であれ、他の方法で解決する以外に、保育士が疲弊しない明るい園の未来はないと信じ、日々努力するのみである。

 

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保育士の正社員を完全週休3日制にする6つの理由

さて、これまでは保育園のお金の仕組みについて簡単に述べてきた。

その上で当園では、収入ありきで物事を決めるのではなく、【目指す保育を実現し続けながら、従業員に最低限の労働環境の保障を実現するために、本当に必要な予算】を把握していく方針をとっている。

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そして、【従業員に最低限の労働環境の保障】について、当園では以下のように定めている。

 

1.保育士の賃金は月給20万円~(時短や時給の場合も、月給の時間比例で算出)

2.正社員は完全週休3日制

3.残業や持ち帰り仕事は無し

4.園児が降園次第、早帰りあり(当然に賃金カットはしない)

5.タイムレコーダーで勤怠を管理し、1分単位の賃金支給、休憩時間の法定遵守

6.別棟にスタッフルームを完備し、休憩は現場から離れることの徹底

7.有給休暇を消滅せずに使い切ること

8.その他、法定の遵守

 

1は地域の最低賃金や周辺園の相場よりは高いので、【最低限よりも高い】という見方も出来るが、求める保育の質や負担感を考えれば、これより安いのは少し厳しいのではないかと感じている。また、通勤圏内の地域には、大きな都市も多く、競合先との比較という観点などではこの額を最低ラインとしている。

2~4は自主的に定めている条件で、5~8は労基法を中心に、法の定めの最低ラインとなっている。

 

今回は、このうち

2.正社員は完全週休3日制

としている理由を記載していく。

 

1.制度の定めによる条件

まず、企業主導型の規定で、保育園の1日の開所時間は11時間または13時間という条件がある。多くの認可園なども同程度の水準となっているはずだ。

保護者の労働時間8時間+通勤時間を基準にし、ある程度の業態の就労時間にマッチするには、最低でも11時間開所の必要がある。

 

次に、保育士の配置基準については、子どもが1人でもいる場合に、保育士は2名必要と定められている。厳密には保育従事者(保育士資格が無くても要件を満たす人)で良いが、半数は保育士の必要があるなど各種規定もあり、ひとまずここでは保育士を2名配置する、としておく。

 

当園は11時間開所で、開所中常時2名の保育士がいる状況を作る、という場合の最もシンプルな方法は【1日10時間勤務+休憩1時間というスタイルで、正社員の保育士が2名園に居続けること】である。(休憩時間中は時短やパートの保育士が居ることで、現場配置を満たす)

そしてこれは単にシンプル(シフト管理などが楽)だというだけでなく、以下のような点からも非常にメリットが大きい選択だと考えている。

 

2.子どもの安定

子どもが精神的に安定して園で過ごせることは最も大切なことであり、その際に先生との愛着関係は欠かせない。

特に、入園して間もない時期や0,1,2歳のうちは、環境変化は子どもの気持ちに不安を生みやすく、「おなじみ」の状態というのはとても大切である。

そのため、1日の中で様々に先生が入れ替わるよりも、1日を通して同じ先生がいる、という環境は子どもの安心につながると言える。

 

3.ミス(事故)防止

保育士が把握しなくてはいけない子どもの情報は、毎日様々に発生する。園児の健康状態から機嫌、家庭の様子や保護者に関すること、活動中の様子、配慮事項、気がかり、など日々生じることは山積みである。アレルギーや病気などの、伝達ミスが重大事故を引き起こしかねない情報もある。

そして情報の伝達(共有)はその回数が増えれば増えるほど、誤って伝わったり、漏れが生じたりしやすい。(伝言ゲームと同じ)

子供達を保育する傍らで漏れなく正確に引継ぎをするというのは、どれだけルール化や仕組み化をしても、実態として非常に難しい。(確実に行うには、引継ぎをする側、される側の両名が保育現場から離脱した状態で行う必要があり、これは配置や現場状況からも非現実的だ。)

早番から中番に引継ぎ、中番から遅番に引継ぎ、と引継ぎが発生するするよりも、1日中常駐する保育士がいる方が、引継ぎは発生しづらいと言える。

 

4.プライベートの充実

一般に、仕事のある日は仕事の前後に予定を入れづらい傾向にあると考えている。

仕事の前に予定を入れる場合、何かあっても仕事に遅れないように余裕を持たせたり、あまり遠方に行かれなかったりするだろう。

仕事の後に予定を入れる場合、残業になってしまう可能性を考えたり、仕事の疲れを考えると、これまた遠方や遅い時間までの予定も入れづらい。

 

また、休みの日にしても、仕事の疲れから寝坊をしようとゆっくり起き、溜まった家事などに追われ、ちょっとお出かけをしても、翌日からの仕事に備えて早めに寝ておこうか・・・などと過ごすと、殆ど何もできずに1日が終わってしまうということはないだろうか。そうなると、週の休みの日数は多いに越したことはない。

連休を取得したいという場合も、週休2日の場合には有給休暇をくっつけて取得することが多いが、週休3日制だとシフトによっては有給休暇を使わずとも3連休や4連休を取ることも可能だ。

 

以上のようなことから、週の労働時間が同一の場合において、週休2日と3日とでは、週休3日の方がプライベートの時間の自由度が増える(やれることの選択肢が増える)のではないか、と考えている。

 

5.急な欠勤、代勤手配に困りづらい

労働者自身やその家族の病気などやむを得ない事情で急な欠勤が生じることがある。感染症のように、一定期間の欠勤となってしまうケースもあるだろう。

その際も、元々の週の休みが多いと、欠勤になる日数も少なくて済む傾向にあり、これは労働者だけでなく、事業者としても【来る前提で組んだ予定が変わる日数が少なくて済む】という意味では、メリットになりえる。

どうしても代勤者をたてないといけない場合も、週休2日の場合は1日休日出勤してもらったものの、その人に代休を取得させてあげられない状況になってしまうと、その労働者は週の休みが1日だけになってしまい、これはなかなかハードだ。

元が週休3日制であれば、1日休日出勤をしてもらうとしても、まだ2日休みが残っている状況になり、プライベートの予定調整もしてもらいやすい傾向にある。

 

6.ライバルが少ない

ただでさえ保育士が不足しているという中に新規参入する以上、何かしらの特徴がないと、採用が難航することは当然に予想できた。

2017年10月の開園時点で、保育士の正社員で週休3日制をうたっている求人は殆ど無く、「え?週休3日?」と関心を持ってもらう特徴であると推定された。

週休3日制は【1日10時間勤務】という、1日の労働時間が長いデメリットもついて回るわけだが(市役所にも、「長いのでは?」と心配されたが)残業や持ち帰りが多い業界では、【所定労働時間が8時間でも、10時間勤務が実態】というケースも少なくない。

ならば、残業や持ち帰り無しとワンセットで【1日10時間勤務】とする分には、【まぁ今もそのくらい働いているしな】と、週の休みが多い利点を選ぶ保育士が少なからずいるだろうと判断した次第だ。

Twitterで有名な保育士が関与した、愛知県の保育園が2018年4月開園で週休3日制を導入しているようだ。少しずつ保育業界でも週休3日制が増えていくかもしれないので、今後に関しては週休3日制自体が強みになることは減るかもしれない。)

 

 

週休3日制の場合は、正社員の在籍数をそれなりに抱える必要があるなど、デメリットも無くはないし、既に週休2日制で回しているところが週休3日制を導入するのは課題も多く、難しいケースあるだろう。

週休2日で1日が短い方がいいという人もいるだろうし、どちらが優れていて、どちらがダメというつもりもない。

とはいえ、週休3日制は事業者側にとっても、労働者にとっても、メリットといえる点があるのも事実なので、保育園に限らず、広く選択肢の1つとして周知されることで、多様な働き方に対応できる社会になるといいなぁと思っている。

 

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保育園の開園時点で必要な物とお金の話

保育園の内装工事で2500万円という話を以前、記載した。

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ここで補足しておきたいのが、工事費のうち、内装工事の3/4額は企業主導型保育事業で内閣府から補助金をいただいている。

つまり、自腹なのは内装工事費の1/4額+設計料だ。

設計料に関しては、内装工事とはいえ、図面を作ってもらうだけでなく、採光などで保育園としての要件があったり、消防など各種法令や行政とのやり取りがある。基本的にこのコストはカットせず、建築士に依頼すべきだろう。開園届やその後の様々な申請、監査などを考えても、しっかりとした図面や根拠資料が整っている方が確実だ。

 

では2500万円もお金がなくても、保育園が作れるのか?と言うと、そうではない。補助金の対象にならないもので、開園までに必要な諸費用が多くあるからだ。

物件の敷金や礼金、不動産屋さんに払う手数料も補助の対象外で、当園の場合はこれが160万円くらい。 

他に開園までに必要な設備や備品でざっと目安で350万円くらいかかった。

ということで、定員12名の小規模園(園庭なし)で、建設費を3/4も補助してもらっても、なんだかんだと1400万円くらい必要だ。

 

余談だが、保育専用の商品はとにかく高い。内装工事でも小児用の便器などの価格に施工業者さんも驚いていた。競合が少ないので価格競争が生じにくいという背景もあるようだ。

一般の量産品で代用できるものはなるべく安く抑える一方で、保育面(発育や食育の観点)や安全面(指挟み事故など、お金には変えられない、子どもの安全を守るための観点)、衛生面(食中毒や集団感染防止などの観点)で重要な部分は、それらを優先してコストカットしすぎないようにもしている。

 

設備や備品の主だった高額出費が以下の通り。

・保育専用机:1つ10万円くらい×2(これはもう少し安い商品もある。当園では、異年齢保育なので柔軟に高さが変えられたり、移動しやすかったりなどから少し高い商品になった。高いが、面取り加工や指挟みなどの事故防止対策は専用品の方が安心だ。)

・調理関係:40万円くらい(冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、フライパンや鍋、食器など。家庭用調理器具を中心にしつつも、複数のおかずを作りつつ18食分調理するためには、数や容量も必要になってくる。)

・玩具:総額10万円くらい(これは開園までに一度に揃えずとも、少しずつ増やしてもいいだろう。とはいえ、少ないと噛みつきなどが発生しやすくなるので、気を付けたいところ。なるべく、綺麗で状態のいいリユース品などを活用して費用を抑えた。)

・ベビーチェア、椅子:総額10万円くらい

・電子ピアノ:10万円くらい(もっと安いものでもいいと思うが、常時保育室に設置しておく点では脚のしっかりした商品の方が安全。)

・ロールカーテン:8万円くらい(西日が強く入る構造のため必須。)

・散歩カート:1台8万円くらい×2(手をつないで歩いてお散歩に行けば要らないと考えることも出来るが、しっかりと集団行動が出来るのは3歳以上。周辺道路状況から安全を最優先し、公園でしっかりと身体を動かす時間を確保する目的でも、園児人数が乗れる2台分を揃えた。散歩カートは避難車も兼ねるため、基準でも0歳は保育士1人で3人、1,2歳は保育士1人で6人という配置の中、いざという時にそれだけの人数を安全に避難させられるか?という論点でも、カートは揃えた方がいいだろう。)

・絵本代:5万円くらい(絵本は充実させたかったので、多い方かもしれない。ブックオフなどでリユース購入にして費用はなるべく抑えた。)

・パーテーション:4万円くらい(異年齢保育で年齢区分に応じて仕切ったり、寝ている児と起きている児を仕切ったりが規定で必要。)

・固定電話:4万円くらい(FAXと複合機を兼ねて。子機付き。)

iPad:4万円くらい(ITシステムを導入したので、登降園管理などで1台は必須。)

他に掃除機や加湿器(季節によっては除湿器)と室温計や時計(室温と湿度にも基準があって管理するほか、毎日の計測記録が必要)、救急セットや嘔吐物処理セット(集団感染防止のため)、お尻拭きやオムツなどの予備品、物干し関係、調味料、文房具、タオルや石鹸、洗剤など。

 

当園では買わずに済んだので上記の目安額に含まれないが、必要なものとしては

・事務室や調理室のエアコン、パソコンなどはスポンサー企業に寄贈いただいた

・洗濯機は新古を無償で譲ってもらった

・予備の服、玩具などはリユース品を多数、無償で譲ってもらった

ふるさと納税の活用や、プレゼントとして玩具を提供してくださった人がいた

ということで、ざっと1500万円くらいは見ておく方がいいだろう。

 

また、補助金制度を使う場合、国に助成の申請をして審査を経て、その承認後に支払われるというタイムラグもある。補助金が入金されるまでは毎月の収入はほぼゼロ円という数ヶ月が生じる。

補助金が入って来るまで、スタッフはお給料待って!業者も各種支払待って!というわけにもいかないので、その期間は事業者自身が立て替えて払っていく必要がある。

ということで運転資金もある程度は必要になるので、結局のところ、工事費の補助をしてもらった上で、別途2000万円~2500万円は保育園の開園前に必要だということになる。

私はそんな額をポーンと出せるほどお金持ちではないので、これらの資金は銀行とスポンサー企業からの融資に頼って、開園にこぎつけた次第だ。

 

 

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不採算部門でも園運営をする4つの意義

前回は【保育園で予算(補助金)が足りないなら、母体の事業から資金投入すればいい】というようなことを記載した。

 

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母体の事業(別の利益)から引っ張るといっても、不採算部門はそもそもカットするのが事業としては効率がいいのでは?という疑問を持つ人もいるかもしれない。

 

それは最もな話で、収支モデルを見て【やらない】という選択をする事業者も実際にいるし、それも一つの選択だろう。

では【不採算部門でもやる意義】があるとしたら、それはどんなことか、私なりの見解を記したい。

 

1.福利厚生費と考える

既存の企業が自社で保育園を作る場合には、保育園の運営側で赤字が出るとしても、それは母体の企業全体の福利厚生費だと考えることができる。

というのも、自社に園があれば、産休育休あけに復帰したくても待機児童問題で復帰できないという職員が減り、そういった職員の働きが更なる生産性の向上(母体事業の収益増)につながると考えると、福利厚生費といえなくもないはずなのである。

 

2.広告宣伝(採用)費と考える

自社に保育園あり、というのは【社会問題に対して取り組んでいる】というプラスの印象を世間に訴えることもできる。

前述の福利厚生と絡めれば、【従業員を大切にしている企業だ】というPRにも出来るだろう。

消費者なり顧客はよりいい印象を持つ方、応援したくなる方を選ぶ(=母体事業の収益増)と考えれば、これまで広告費に使っていた数万円を園運営に回す、という考え方もできるだろう。

また、産休育休からの復帰がしやすい=離職率の低下にもつながるため、採用費の減少にも効果が期待できる。

新規採用時にも、【将来的に結婚して出産をしても、安心して働き続けられるな】という印象につながり、若手の採用に有利な条件としても使える。

人手不足の中では、より離職者を減らし、求職者が集まりやすい条件を持っているほど、採用にかける費用を抑えられるため、求人にかけていた費用を園運営に回す、という考え方もできる。 

 

3.社会的意義

福利厚生、広告宣伝というのは自社にとってのメリットを考えた場合の話が主軸だが、自社のメリットに直結しなくとも、風が吹けば桶屋が儲かる式に巡り巡って、社会全体がよくなる(結果、自社にも中長期でプラスが期待できる)側面がある。

 

例えばより多くの雇用を創出でるようになるという点。

【働きたいのに預け先の問題で働けない】層の活躍の場が広がると、各世帯の収入増が見込め、消費活動を促進できる可能性も増える。

働きたいのに働けない、という状況においては、家庭でも【収入増が見込めない以上、なるべく使わないようにしよう】となりがちで、消費活動が停滞してしまうからだ。

 

或いは、自社以外の受け入れもする場合、その労働者の勤務先全体にとってプラスになるという点。

育休明けで復帰を予定していても、結果的にその労働者が復帰できないとなると、【いつ待機から入園になるかわからない】という期間が生じてしまう。

事業者側としては、その不確定な状況に関して追加採用で補うのは少し難しい点がある。そうなると、他の労働者達に残業や休出などの負担がかかってしまう可能性が高まるだろう。

他の労働者達にもプライベートや家庭があるわけで、1人の復帰により、それぞれの負担が減ることが出来れば、その背後の家族などにも良い影響があるといえよう。

残業続きでプライベートと仕事が両立できなくなり、退職を考えた職員が辞めずに済むかもしれない。

パパの家庭不在状態でワンオペに苦しむママが減るかもしれない。

自社以外の待機児童を受け入れることは、直接的には自社の利益にならないかもしれないが、上記のように少しでもハッピーな状態の人が増える状態を作れることは、社会的に消費を促す要素になりえるだろう。

 

もっと言えば、ライフプランを考える中で、【本当は子供もほしいけれど、復帰後の大変さを考えると諦めざるを得ない】というようなケースの解消にもなれば、少子化(今後の労働人口や消費者人口の減少)の対策にもつながり、将来の自社の労働力や、顧客(消費者)の減少を回避するという見方も出来るだろう。

 

当然にそう単純な問題でないことはわかったうえで、消費活動が活発になることは、経済的な効果もあり、社会全体がよくなる、ひいては自社にもいい影響が巡り巡ってくる(=直近では不採算でも、中長期で自社にもプラスが見込める)と考えることも、誤りではないはずだ。

 

 4.子供は可愛い

散々理論で書いておいて、最後はこれか!という、もう本当にただの個人の感情の話だが、子どもは可愛い。そして未来への希望が詰まっていて、それだけでも十分に保育園を運営する意義はあると思っている。

自分の子も当然に可愛いし、我が子のように愛情をもって保育に臨むのは当然として、経営者(運営)側から見る園児は、どちらかというと孫とか親戚のような感覚だろうか。

経営陣が保育園部門は毎月赤字!とピリピリするのでなく、我が孫可愛さについ、毎月色々とお金をかけてあげちゃって・・・くらいに思ったら、気持ちよく保育園部門の不採算を受け入れられる・・・かも?

 

余談だが、私がそもそも園を始めるきっかけになったのも、根っこは感情だ。

自分もかつて保育園にお世話になり、当時の先生たちへの感謝はもとより、保育園でのびのびと成長した子どもたちを見て「保育園っていいなぁ」と純粋に思った気持ち。

【おばあちゃんになった時、保育園にばーんとお金を出して理事長とかになって、それで毎日掃除とか花壇の世話とかをして、のんびりと園児を見守ってるポジションがしたいかなぁ。】

そんな夢物語をポロっと話したことから、様々なご縁とタイミングと協力のおかげで、おばあちゃんになる前に園長になってしまったのである。

おかげ様で掃除も花壇の世話も夢が叶っているが、肝心の【のんびり】は数十年後までおあずけのようだが・・・。

 

ちなみに、保育園単体で収益がある状態になることが、一番の理想ではある。ただ、現状ではそれは難しく、収益を求める場合には、どこかが苦しむ(我慢をする)状況になると感じている。

せっかく母体事業のある企業が参入してくれても、保育園部門に対して少しでも赤字を抑えろ、少しでも採算が合うようにしろ、となってしまうと、予算(補助)の中で悪戦苦闘している状況と変わらなくなってしまう。

だから、せめて保育業界水準が今のようにかなり厳しい状況にあるうちだけでも、不採算は前提だから、お金は気にせず子ども達がのびやかに過ごせて、保育士が疲弊しなくていい環境でやっていけるようにしなさい!さぁこれが潤沢な予算ですよ!ばーん!と母体の企業には思ってほしいなぁという願いで、赤字もこう考えたらただの損失ではないのでは?という4パターンを提案した次第だ。

 

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